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(あらすじ・感想)『青い春を数えて』(2018年)をヨム!不器用な“青春の余白”を描き出す連作短編集の輝き

高校時代のあのほろ苦い感情を、もう一度思い出したくなる一冊でした。武田綾乃さんの『青い春を数えて』は、5人の女子高校生それぞれの視点から“青春”のリアルな想いを綴った連作短編集です。読後には胸の奥にじんわりと懐かしさと切なさが広がり、「ああ、青春ってこういうモヤモヤも含めて青春なんだよな」としみじみ感じました。本記事では、本作の魅力や見どころをネタバレを避けつつご紹介します。登場人物の関係性や物語のあらすじ、心に残った感想と深い考察、さらにはSNS上の読者の反応までまとめました。青春小説好きの大学生以上の皆さんなら共感できるポイントが満載ですので、ぜひ最後までお付き合いください!

著者紹介:武田綾乃さんとは?

武田綾乃(たけだ あやの)さんは1992年生まれ、京都府出身の小説家です。大学在学中の2013年に小説家デビューし、第二作にあたる『響け!ユーフォニアム』シリーズがいきなりアニメ化され大ヒットしました。吹奏楽部を舞台にしたこの青春小説シリーズは累計144万部を突破する人気作となり、武田さんは一躍青春小説の旗手として注目されます。その後も高校カヌー部を描いた『君と漕ぐ』シリーズ(新潮文庫nex)や、若者の等身大の葛藤を描く『愛されなくても別に』など話題作を次々発表。2021年には『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞し、青春小説の枠を越えて作家としての評価を高めました。

武田綾乃さんの作風の特徴は、「さまざまな青春を時にキラキラと、時にヒリヒリと描く」こと。学生たちの輝く瞬間だけでなく、胸がチクっと痛むような繊細な悩みや葛藤まで丁寧にすくい上げるのが持ち味です。代表作『響け!ユーフォニアム』でも青春の熱さと苦さが同居していましたが、本作『青い春を数えて』でもその真骨頂が発揮されています。「青春の余白」ともいえる不器用で複雑な感情をリアルに描き、多くの読者の共感を呼んでいる作家さんです。

登場人物紹介

『青い春を数えて』に登場する主要人物たちを、フルネームで紹介します。それぞれが異なる悩みや個性を抱える高校生で、物語の中でリンクし合いながら青春の群像劇を織りなします。

  • 宮本 知咲(みやもと ちさき) – 放送部に所属する高校3年生。周囲からは面倒見の良い「優しい先輩」と思われていますが、実は人知れず劣等感とプライドの高さに葛藤しています。かつて大会での失敗から本番に臨む勇気を失いかけており、同じ放送部の親友・有紗に対して憧れと嫉妬が入り混じった複雑な想いを抱えています。
  • 辻脇 菜奈(つじわき なな) – 宮本知咲と同じ高校3年生。効率と合理性を重んじる優等生タイプで、受験に不要な科目は平気で赤点を取るなど徹底的に要領よく過ごしています。表向きは冷静ですが、「このままレールに沿った人生で本当に幸せになれるのか?」という不安を内に秘めており、周囲で夢中になにかに打ち込む同年代への嫉妬心も抱えています。
  • 森崎 真綾(もりさき まあや) – 別の高校に通う1年生。料理が大好きで家庭的なしっかり者です。自作のお弁当やお菓子をSNSに投稿して「いいね」をもらうのが日課ですが、ひょんなことから不器用な姉・咲綾(さあや)の失敗作スイーツが大反響を呼び、自分の影が薄くなってしまいます。「努力している自分より、愛嬌だけの姉ばかり注目される。私って何なの?」という理不尽さに直面し、心がざわつきます。
  • 米谷 泉(こめたに いずみ) – 真綾の親友で同じく高校1年生。黒髪ショートにスラックス制服というボーイッシュなスタイルで登校し、周囲の固定観念にあえて抗っています。「自分は自分」と性別のラベルに縛られず生きたいと願う一方で、他人に理解されない孤独も感じている繊細な少女です。電車で偶然出会った清水千明とは正反対の価値観ながら、次第に心を通わせていきます。
  • 清水 千明(しみず ちあき) – 泉が電車内で出会う「とんでもなく可愛い美少女」。細谷と同じ女子校に通う高校3年生で、校内では有名な存在です。ルールや束縛を嫌い、自分を貫く自由奔放さから“伝説の不良”などとも噂されますが、本人は至ってマイペースで聡明な女の子。人からどう見られるかを気にする一面もありつつ、泉や細谷のような悩める子には分け隔てなく手を差し伸べる優しさと行動力があります。
  • 細谷 – (フルネーム不明)清水千明と同じ学校に通う高校3年生。真面目で優等生タイプの委員でありながら、自分に自信が持てず「無個性」な自分を殻に閉じ込めがち。叱られるのを恐れて本音を言えない臆病さも持っています。あるきっかけから清水と二人で思い切った“サボり旅”に出ることになり、閉塞感だらけの日常から飛び出す経験を通して彼女の中に少しずつ変化が芽生えていきます。

このように、本作では5人の女子高生(宮本知咲、辻脇菜奈、森崎真綾、米谷泉、細谷)それぞれが主人公となり、そして清水千明が物語のキーパーソンとして登場します。全員が高校生で、年齢も境遇も近い彼女たちの悩みは、お互いに少しずつリンクして物語全体に広がりを与えています。

あらすじ

『青い春を数えて』は、5つの短編からなる連作形式の青春ストーリーです。各章ごとに主人公が異なりますが、同じ地域の高校生たちの物語がゆるやかに交差しており、ぜひ第1章から順に読み進めることをおすすめします。

  • 「白線と一歩」 – 放送部を舞台にした物語。宮本知咲は誰にでも優しい先輩を演じていますが、実力派エースの親友・有紗の存在に密かな劣等感を抱えています。全国大会目前、有紗のある決断をきっかけに知咲の中のプライドが刺激され、二人は衝突してしまいます。後輩の唯奈も巻き込みながら、知咲は「怖くて踏み出せなかった一歩」と向き合うことになるのです…。
  • 「赤点と二万」 – 主人公は知咲のクラスメイト・辻脇菜奈。要領よく受験勉強だけに集中する菜奈は、部活に打ち込む知咲をどこか冷めた目で見ていました。ところが、ひょんなことから模試でトップクラスの長谷部と補習仲間になり、彼から「君と宮本さんは世界の見え方が違うのかもね。僕は先ばかり見てるけど、宮本さんは今を見てる」と指摘されます。効率至上主義だった菜奈は、未来だけでなく「今という一瞬を色鮮やかに生きること」の大切さに気づき始めます。
  • 「側転と三夏」 – 一転して舞台は高校1年生の世界へ。森崎真綾は料理上手で世話好きな女の子。自慢の手料理をSNSに投稿して承認欲求を満たしていましたが、ある日、ぶきっちょな姉・咲綾の作った猫模様の失敗カップケーキを載せたところ大反響!以降、自分より姉の料理ばかり期待されるようになってしまいます。「頑張ってるのになぜ報われないの?」――もやもやを抱える真綾でしたが、姉からの何気ない一言をきっかけに肩の力を抜く方法を見出していきます。
  • 「作戦と四角」 – 第3章で登場した真綾の親友・米谷泉の視点で進む物語。泉は「自分は自分」という信念のもと、女子でありながらスラックスの制服にネクタイという出で立ちで通学し、周囲の偏見と戦っています。性別のレッテルで人を判断されたくない彼女は、他人に理解されることを最初から諦め気味。しかしある日、電車で出会った「可愛すぎる美少女」清水千明から思いがけず歩み寄られ、互いに相容れない主張を持ちながらも心を通わせます。清水との対話を通じ、泉は「見られたい姿こそが本当の自分」と胸を張って言える強さを手に入れていきます。
  • 「漠然と五体」 – いよいよクライマックス。最後の章では、ある女子生徒(細谷)が主人公となります。何事も無難にこなし、波風立てないように生きてきた細谷は、心のどこかで息苦しさを感じていました。そんな彼女がクラスメイトの清水千明に誘われ、学校を抜け出して電車を乗り継ぐ小さな逃避行に踏み出します。正反対の個性を持つ清水との旅を通じて、細谷は初めて自分の殻の外に飛び出し、日常では得られない大切な何かに気づいていきます…。最後まで読み終えたとき、きっとあなたもこの章の展開に心を揺さぶられ、思わず頭を抱えてしまうかもしれません(筆者は抱えました…!)。

各短編はそれぞれ完結した物語ですが、知咲の名前が別の章で言及されたり、泉の姉が菜奈の家庭教師だったりとエピソード同士がゆるやかにつながっています。章を追うごとに「前の主人公がこんなところで登場するんだ!」という発見があり、短編集でありながら一つの長編小説を読んでいるような満足感が味わえます。高校や学年は異なるものの、登場人物たちは皆同年代。同じ時代を生きる仲間として、お互いの物語が少しずつ交差していく構成が見事です。派手な事件は起こらなくとも、読み終える頃には5人の少女たちの人生がふんわりと繋がり、「青春」という一つの絵のピースがカチリとハマるような爽快感を味わえるでしょう。

感想:胸に刺さる青春の機微

本作を読み終えてまず感じたのは、青春時代特有のもどかしさや葛藤がここまでリアルに描かれていることへの驚きです。どの短編にも「いるいる、こういう子!」と思わせる等身大の高校生が登場し、彼女たちの内面描写がとても丁寧。たとえば、知咲が後輩に「先輩、優しいですね」と言われた場面では、心中で「じゃあ優しくない私は嫌いなの?」と苦笑するシーンがありました。表向き笑顔で受け答えしながら、内心では棘のある疑念がふっと湧いてしまう――誰しも経験のある繊細な心理を見事に文章化していて、「わかるなぁ」と唸ってしまいます。こうした何気ない会話の裏にある本音をすくい上げる描写が頻繁に登場し、終始共感しっぱなしでした。

また、各章で語り手が変わるごとに文体や語り口も微妙に変化している点もお見事です。菜奈の章では理屈っぽい考察が多めだったり、真綾の章ではSNS世代らしいカジュアルな語りになったりと、主人公の個性が文体に反映されています。とはいえ決して読みにくいわけではなく、文章は平易でテンポが良いのでスイスイ読めました。短編集ということで話が途切れ途切れになるかと心配しましたが、むしろ「次はどんな子の青春だろう?」とワクワクしながらページをめくることができ、最後まで飽きさせません。

特に心に残ったのは第5章でした。具体的には語れませんが、細谷と清水が繰り広げる小さな旅は、本作のテーマを象徴するようなエモーショナルなクライマックスです。読み終えた後、タイトル『青い春を数えて』の意味を改めて考えさせられました。「青い春」とは青春のことですが、5つの短編それぞれで描かれた青い春=青春の断片を数え上げていくような構成になっており、最後にそれがひとつの大きな青春像として浮かび上がってくる感覚があります。武田さんの巧みな構成力に脱帽するとともに、自分自身の高校時代の些細な思い出までも数え直してみたくなる、不思議な余韻が残りました。

良かった点ばかりを述べてきましたが、気になった点も少し挙げておきます。強いて言えば登場人物が多いため、序盤で人物関係を把握するのに少し注意が必要かもしれません。筆者自身、読み始めは「知咲と有紗がどの子で、菜奈はどこに出てきた子だっけ?」と整理するのに頭を使いました。実際、読者の中には「登場人物の名前と役割をメモしながら読んだ」という方もいるようです。もっとも、各章に没入していくうちに自然と覚えられるので、読み進めれば杞憂でしたが…。もう一点、爽やかな青春ストーリーを期待すると意外に感じるかもしれません。本作には青春の輝きだけでなく影の部分(嫉妬や劣等感、閉塞感など)が色濃く描かれており、全体として爽快一辺倒ではありません。しかし裏を返せば、それも含めて「まごうことなき青春の一部」であると物語が教えてくれます。むしろ大人になった今振り返ると、このほろ苦さこそが青春の本質だったように思えてきて、筆者にとっては十分に爽やかな読後感でした。

総じて、『青い春を数えて』は「青春って甘酸っぱいだけじゃないんだ」と改めて気づかせてくれる珠玉の短編集でした。高校生という多感な時期のきらめきも苦味もしっかり閉じ込められており、読後は心地よい余韻に浸れます。

考察・解説:テーマに秘められたメッセージ

それでは、本作のテーマや構造についてもう少し深掘りしてみましょう。ネタバレは避けつつも、物語に隠れたメッセージや象徴について考察します。

「青春の余白」を描くとは?

本作のレビュータイトルにもある“青春の余白”という言葉。これはまさに、青春の表と裏、両方を描く武田綾乃さんの姿勢を言い表しているように感じます。青春小説というとキラキラした成功や恋愛模様を思い浮かべがちですが、この作品で描かれるのはむしろその合間にある不器用な想いです。嫉妬や劣等感、将来への不安、自己嫌悪や反発心…どれも決して爽やかな感情ではありませんが、青春期には誰もが抱える可能性のあるものですよね。武田さんはその「余白」にこそスポットライトを当てています。

各短編の主人公たちは皆、何かしら満たされない思いを抱えています。知咲は「優しい先輩」という殻の中でもがき、菜奈はレールから外れる勇気が持てずにいる。真綾は努力と結果が報われない理不尽さに苛立ち、泉は自分らしさを理解されない孤独に耐え、細谷は波風立てないよう生きる息苦しさに押し潰されそう…。彼女たちが向き合うテーマをキーワード化すると、部活への情熱と挫折、進路への不安、友情に潜む妬み、自己認知の揺らぎ、規則への反抗といった具合でしょう。まさに「青春、友情、嫉妬、羨望…どれも女子高生のリアル」が詰まっていると感じます。

面白いのは、章タイトルにそれぞれ数字の一から五が隠れている点です(「一歩」「二万」「三夏」「四角」「五体」)。この数字のカウントアップが示すように、物語が進むにつれて青春の様々な側面が一つずつ積み重なり、カウントを重ねるようにテーマが深化していく構成になっています。最初は部活という身近なテーマから始まり、次第にSNSやジェンダー観、そして人生観へとスケールが広がっていく様子は、まるで青春期の悩みの成長過程を追体験しているかのようでした。読者は序盤で比較的わかりやすい葛藤(例えば知咲の部活での悔しさ)に共感し、次第により本質的で漠然としたテーマ(自分はどう生きるのか?)へと引き込まれていきます。数字が増えるごとに悩みの深度も増していくようで、この仕掛けには思わず唸りました。

レールと脱線のメタファー

本作の随所には「レールに乗る/外れる」というメタファーが登場します。これは高校生たちが感じる同調圧力や将来への一本道を象徴しているように思えます。菜奈はまさに「レールに拘泥する」タイプで、敷かれた進学コースから逸れないように必死です。一方、清水千明は「レールがあるから外れて自己主張する」という性格で、規則から外れること自体をアイデンティティにしています。細谷はその中間で、レールから外れるのが怖いけれど走っているうちに息苦しさも感じている。彼女たちの対比は青春期における「レール=既定路線」との向き合い方そのものですよね。

特に第5章で細谷と清水が電車を乗り継いで旅に出る場面は、このメタファーの集大成でしょう。電車=レールの上を走る乗り物に乗りながらも二人は学校という日常のレールから逸脱している。この矛盾した状況が示唆するのは、「どんなに規則正しい毎日も、ほんの少し勇気を出して外れてみれば新しい景色が見える」というメッセージではないでしょうか。清水という人物はまさに細谷にとって「夢に見た存在」であり、自分にはない自由さを体現しています。細谷が清水と行動を共にする展開は、彼女にとってレールを外れる疑似体験であり、その果てに「それでも生きていくしかない」と知るターニングポイントになったように感じます。

このように、レールから外れることへの恐怖と憧れは本作の根底に流れるテーマの一つです。「安易に人生から逃げてはいけない。辛くても無個性なままでも生きていくしかない」という清水との旅から得た細谷の感覚は、作者から青春世代へのエールにも思えます。誰しも一度は「もう全部投げ出したい!」と思う瞬間がありますが、それでも人生を止めずに進んでいけばきっと未来は拓けるーーそんなポジティブなメッセージが、ラストには込められているように受け取りました。

群像劇としての妙味

もう一点、本作を語る上で外せないのが連作短編集ならではの群像劇的な妙味です。章ごとに主人公は違えど、前の章に脇役で登場した人物が次の章では主役になったり、思わぬところでキャラクター同士が繋がっていたりと、読者をニヤリとさせる仕掛けが随所にあります。たとえば菜奈の家庭教師として真綾の姉・咲綾が登場した時には、「えっここで前章の姉妹が繋がるの!?」と驚きましたし、清水千明が第4章では泉に、第5章では細谷に絡んでくる展開にも興奮しました。

この構成のおかげで、それぞれの物語に奥行きが生まれています。ある人物の視点からは一面的にしか見えなかったキャラクターが、別の人物の物語では違う表情を見せることも。知咲にとっては眩しい存在だった有紗も、菜奈から見れば「高三にもなって大会なんて…」と映る。ただのモブに思えた同級生・長谷部君が意外に芯のある言葉をくれる…など、一人ひとりの存在に立体感が宿るのです。これは「人にはそれぞれ物語がある」という当たり前だけど忘れがちな真実を思い出させてくれました。自分から見て地味だったクラスメイトにも、本人なりのドラマがきっとあったのだろう、と。群像劇としての巧みさが、読了後の満足感や世界の広がりに直結していると思います。

さらに言えば、本作には直接描かれない余韻の部分も多分に残されています。各短編の結末は綺麗にまとまりますが、その後彼女たちがどう歩んでいくのかは読者の想像に委ねられています。例えば知咲はあの後放送コンテストに挑んだのか?菜奈は進路をどう変えたのか?真綾と姉の関係は?清水と細谷の友情は続くのか?…気になることは尽きません。それこそが“青春の余白”とも言え、本作を読み終えた私たちがそれぞれ自分の中で物語を補完したくなる余地になっています。「そして奇跡は起こる」「青い鳥なんていらない」といった文庫版特典の短編が用意されているのも、その余白を埋めるファンサービスでしょう。後述するように、公式でスピンオフ掌編が公開されているのも嬉しいポイントです。

総じて、『青い春を数えて』のテーマは一言では言い表せませんが、強いて言えば「ありのままの自分を抱えて、それでも一歩踏み出す青春」でしょうか。嫉妬や不安といったマイナスの感情も「青春の表も裏もすべて抱えて、少女は大人になっていく」ものだと物語は語っています。それは武田綾乃さんが本作で読者に伝えたかったメッセージそのものではないかと感じました。青く未熟な春をいくつ数えても、人はその度に少しずつ前に進んでいける。登場人物たちの姿を通じて、そんな静かな希望がしっかりと胸に刻まれる作品です。

読者の反応:SNSに見る評価あれこれ

発売以来、『青い春を数えて』にはSNS上でも多くの感想が寄せられています。ここでは代表的なポジティブ・ネガティブの声を5件ずつご紹介しましょう。実際の読者がどんな風に感じたのか、その傾向を見てみます。

総合的に見ると、ポジティブな意見としては「青春の機微をリアルに描いて共感できる」「連作の構成が巧みで感動的」「文章が読みやすい」といった点が評価されています。実際、「これは青春小説の傑作」「読んで良かった」という声が多く、幅広い読者から支持されている印象です。一方、ネガティブな意見では「登場人物が多くて混乱する」「地味で盛り上がりに欠ける」といった指摘が見られました。ただしこれらは本作の作風ゆえとも言え、裏を返せば「派手さよりリアリティ重視」「群像劇として丁寧」という長所にも通じます。多少好みは分かれるものの、概ね「読んで損なし」「むしろ多くの人に薦めたい」という肯定的な評価が大勢を占めているようです。

ポジティブな反応(称賛) 🟢

  1. 「読んでいて高校時代の自分を思い出して泣きそうになった。登場人物みんな他人とは思えない…青春の葛藤がこんなにもリアルに描かれてて刺さる!」
  2. 爽やかじゃない青春もちゃんと描かれているのが良い。嫉妬とか劣等感とか、こういう陰の部分こそ共感できる。読後は不思議と前向きな気持ちになれました」
  3. 「連作短編集という構成が見事。それぞれの物語が少しずつリンクしていくから、一話ごとに感動が増幅して最後は胸熱。こんな青春小説は初めてです!」
  4. 「武田綾乃さんは初読でしたが、文章が読みやすくて一気読み。心理描写も上手でキャラの心情が手に取るようにわかるし、本当に面白かった。もっと早く読めば良かった!」
  5. 大人になった今読むべき青春小説だと思う。高校生の頃感じてたモヤモヤを追体験できて懐かしいし、『あの悩みも無駄じゃなかったんだな』って救われた気持ちになります」

ネガティブな反応(批評) 🔴

  1. 「登場人物が多くて途中ちょっとこんがらがった…。名前が覚えにくくて誰が誰だっけ?となる場面も。できれば巻頭に相関図が欲しかったかも」
  2. 「全体的に地味で淡々としている印象。大きな事件や派手な盛り上がりがないまま終わるので、人によっては物足りなく感じるかもしれない」
  3. 「女子高生同士の関係性がメインなので、恋愛要素や男性キャラ視点の話も読みたかったなぁと思ってしまった。ちょっと百合っぽい雰囲気もあるし、人によって好みは分かれそう」
  4. 「もっと爽やかな青春ストーリーかと思いきや結構どろどろした感情の描写が多くて驚いた。読後にスカッと爽快!という感じではないので、読む時の気分は選ぶかも」
  5. 「短編集ゆえに一話一話が短く、設定やドラマが深まる前に終わってしまう印象も。各話もう少しボリュームがあればさらに感情移入できたのではと感じました」

次回への期待:広がる「青い春」のその先

『青い春を数えて』は短編集のため直接的な続編こそありませんが、読者からは「ぜひ続きが読みたい!」「その後の彼女たちをもっと見たい」という声も上がっています。実は講談社のWEBサイト上で、本作のスピンオフ掌編が2編公開されています。文庫版に特別収録された「そして奇跡は起こる」「青い鳥なんていらない」という短いエピソードで、登場人物たちの物語を補完する内容です。読後にもっとこの世界に浸りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

また、武田綾乃さんの次回作や他の作品にも自然と期待が高まりますよね。本作で描かれたような青春の光と影の描写は、武田さんの真骨頂です。次の作品ではどんな舞台で、誰たちの“青い春”を見せてくれるのだろう?と想像せずにはいられません。実際、武田さんは本作の後も高校生ユーチューバーを主人公にした『愛されなくても別に』や、前述の『君と漕ぐ』シリーズなど精力的に青春小説を書かれています。いずれも舞台は違えど「自分らしく生きること」への真摯な眼差しが通底しており、ファンとしては新作が出るたびにワクワクです。

『青い春を数えて』に心打たれた方なら、武田綾乃ワールドの他の物語もきっと楽しめるはずです。もし続編があるとしたら…知咲や菜奈たちの大学生編?それとも全く別の形で「大人になった彼女たち」が描かれる?想像は尽きませんが、どんな形であれ武田さんならではの青春群像をまた届けてくれることでしょう。本作の読後の余韻に浸りながら、次なる“青春”物語への期待を膨らませたいと思います。

関連グッズ・書籍紹介

『青い春を数えて』そのものにグッズ展開は多くありませんが、本作に関連していくつかチェックしておきたいアイテムがあります。

  • 講談社文庫版(2021年発売) – 単行本から3年後に発売された文庫版。加筆修正のほか、前述した掌編「そして奇跡は起こる」「青い鳥なんていらない」の2編が追加収録されています。単行本既読の方も、新たなエピソード目当てに手に取る価値ありです。表紙カバーは単行本と同じくイラストレーター・かとうれいさんの爽やかなイラストで、夏空の下で戯れるセーラー服の女の子二人が描かれています。
  • 武田綾乃 既刊作品 – 本作を気に入った方には、作者の他作品もおすすめです。特に『響け!ユーフォニアム』シリーズ(宝島社文庫)は、高校吹奏楽部を舞台に青春の葛藤と成長を描いた連作小説で、本作と通じるものがあります。さらに『石黒くんに春は来ない』(幻冬舎文庫)や『その日、朱音は空を飛んだ』(文藝春秋)など、タイトルに「春」が入った作品もあり、武田さんの描く多様な青春像を楽しめるでしょう。
  • 関連インタビュー・記事 – 武田綾乃さん自身のインタビュー記事も興味深いです。『青い春を数えて』刊行当時のインタビューでは、「青春の一言では片づけられない思いを描きたかった」と語っており、本作のテーマに対する思い入れが伺えます。また、文庫化記念のイベントレポートや文学系YouTuberによる書評動画なども公開されているので、作品理解を深めたい方は探してみてください。
  • カバーイラスト関連 – 表紙イラストを手掛けたかとうれいさんのファンにも、本作は要注目。爽やかなブルーが印象的なカバーイラストは「夏にぴったり」と作者も太鼓判を押す美麗なもの。グッズではありませんが、イラストレーター関連の画集やSNSをチェックすれば、表紙絵の別バージョンやラフ画が見られるかもしれません。お気に入りの場面を思い浮かべながら表紙を眺めると、また違った味わいがありますよ。

まとめ

最後に、『青い春を数えて』の総合評価と感想をまとめます。筆者の評価は星4.5(5点満点中)です!青春小説として非常に完成度が高く、5編それぞれが珠玉の短編でした。特に終盤の盛り上がりと読後の余韻は素晴らしく、思わずため息が漏れるほど…。残りの0.5点は「もっとこの世界を読んでいたい!」という贅沢な未練に対するものです。

本作は高校生のみならず、大人になった今だからこそ響く物語だと思います。青春時代の自分を思い返して「こんな気持ちあったな」と懐かしむも良し、登場人物たちの姿に「今の自分も頑張ろう」と励まされるも良し。小さな嫉妬や社会への不満、自己評価の欲求、そして何かから解放されたい気持ち――そうした普遍的なテーマが詰まったストーリーは、きっと読む人それぞれの胸に刺さるものがあるでしょう。

ぜひ皆さんも『青い春を数えて』を手に取って、5人の少女たちの物語に浸ってみてください。読み終えた後にはきっと、誰かと語り合いたくなるはずです。あなたにとって“一番刺さった青春エピソード”はどれでしたか? 感想をSNSでシェアして、この作品の輝きをもっと広めていただけたら嬉しいです。きっと、あなたの中にも数えきれない青春のかけらが蘇ってくることでしょう。青春の煌めきと余白を描いた武田綾乃さんの世界、ぜひご堪能あれ!

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morishy

職業:外資系ITサービス企業での技術職 趣味:読書、アニメ/ドラマ/映画鑑賞、スポーツ観戦、ゲーム、プラモなど 自己紹介: IT企業で技術職で働いており、新しいものについて比較的興味を持ちやすい体質です。最近は読書やアニメ、ドラマを中心とした動画鑑賞にどっぷりはまっており、作品の良いところを中心に紹介したいと考えて立ち上げました。 好き嫌いがない性格なので、結構幅広く作品を鑑賞しているので、皆さんの今後の読書や動画鑑賞に活かしてもらえるような情報提供ができれば幸いです。

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