『3月のライオン』第10巻を読み終えて、思わず笑ったりホロリと涙ぐんだりしてしまいました。本作はプロ棋士の少年・桐山零と周囲の人々との心温まる交流を描く人気漫画です。今回の第10巻では、いじめを乗り越えたひなたの新生活に胸を撫でおろしつつ、家族にまつわる衝撃的な展開が待ち受けていました。零の成長が感じられるエピソードや、物語に散りばめられた深いテーマについて、本記事でたっぷりレビュー&考察していきます。
著者紹介
本作の著者は羽海野チカさん。代表作に青春群像劇の名作『ハチミツとクローバー』があり、繊細な心理描写と温かな人間ドラマを描くことに定評のある漫画家です。羽海野チカさんは、日常の中の小さな幸せや葛藤を丁寧にすくい上げる作風で知られており、『3月のライオン』でもその持ち味がいかんなく発揮されています。将棋という競技の世界を舞台にしながらも、家族愛や孤独、生きることの意味といった普遍的なテーマを優しいタッチで表現。社会問題にも踏み込み、例えば本作ではいじめ問題や家庭の絆などシリアスな題材も扱っていますが、それを読者に寄り添う目線で描いているのが特徴です。羽海野さんならではのユーモア(作中に登場する可愛らしいネコたちのゆるい解説シーンなど)も随所に散りばめられ、重厚なテーマの合間にクスッと笑える演出も魅力です。このように、羽海野チカさんは温かみと深みを兼ね備えたストーリーテラーであり、その作風が『3月のライオン』第10巻の随所にも活かされています。
登場人物紹介
- 桐山零(きりやま れい) – 本作の主人公。17歳でプロ棋士となった高校生です。幼い頃に家族を亡くし、心に孤独を抱えていましたが、川本家の三姉妹と出会ったことで少しずつ変化してきました。第10巻では、ひなたの高校入学をきっかけに学校生活でも笑顔を見せるようになり、彼女たちを守ろうと奮闘する頼もしさも披露。人間的に大きく成長した零の姿が印象的です。
- 川本ひなた(かわもと ひなた) – 川本家の次女で、中学生時代にいじめに立ち向かった勇気ある女の子。第10巻では零と同じ高校に入学し、新しい友達もできて楽しい日々を過ごしています。明るく優しい性格で、零にとってかけがえのない存在。笑顔を取り戻したひなたの姿に、読者もホッとさせられるでしょう。
- 川本あかり(かわもと あかり) – 川本家の長女で、妹たちの面倒を見ながら家計を支えるしっかり者。温かい母性的な人柄で、零にとっても「お姉さん」のような存在です。第10巻では、家族に降りかかる突然のトラブルに直面し、妹たちを守るため懸命に対応します。あかりの強さと優しさが光る場面が見どころです。
- 川本モモ(かわもと モモ) – 川本家の三女で、幼稚園児。天真爛漫で愛らしく、川本家のアイドル的存在です。零にも懐いており、彼を「お兄ちゃん」的に慕っています。第10巻でもモモの無邪気さは健在で、シリアスな場面でも彼女の存在が癒やしになっています。
- 二海堂晴信(にかいどう はるのぶ) – 零の親友であり良きライバル。同い年のプロ棋士ですが、幼少期からの病気を抱えつつ将棋に情熱を燃やす頑張り屋です。ぽっちゃり体型でエネルギッシュな性格で、零にとって数少ない親友でもあります。第10巻では直接対決のシーンこそないものの、常に零を気にかけ支えている存在。二人の友情とライバル関係は、本作の魅力の一つです。
あらすじ
▼ひなたの新たな日常と零の学生生活
高校3年生になった桐山零は、自分の通う高校に川本ひなたが入学してきたことで大喜び。春、校内で見かけるひなたの制服姿に零は思わずニヤニヤが止まりません。今年から将棋部には新入部員が来るかも?という期待もありました。ひなたは同級生のつぐみという女の子と仲良くなり、「手作り部」という部活で楽しい高校生活のスタートを切ります。昨年は友達のいじめ問題で毎日悩み泣いていたひなたが、今では笑顔で学校に通っている姿に零も読者も一安心です。零はというと、相変わらず将棋部のメンバーは渋い先生方(林田先生や校長先生たち)ばかりですが、新入生歓迎会では将棋部に冷やかし半分で来た男子生徒をプロの洗礼で一蹴!なんと、ひなたに「将棋を教えてあげるよ」と言って近づいてきたクラスメイトの男の子に対し、零は遠慮なしの真剣勝負で完膚なきまで叩きのめしてしまったのです。将棋初心者の新入生を容赦なく撃退する零…(笑)。おかげで新入部員はゼロになってしまいましたが、零は「ひなたに変な虫が付くのを阻止せねば!」とばかりに必死だった様子。林田先生から「お前、大人げないぞ!器ちっちゃ!」と呆れられつつも、「でもその方がずっといい」と笑われるシーンは微笑ましく、零がひなたのことになると感情むき出しで暴走してしまう様子に青春を感じます。そして、そんな騒動の末に零は図らずもひなた達の昼食仲間に加わることに成功!屋上の階段で一人寂しくパンをかじっていた彼も、“ぼっち飯”を卒業し、にぎやかなランチタイムを送れるようになりました。孤独だった零の学園生活に温かな光が差し込む冒頭に、読者としても胸がじんとします。
▼重なる影:才能と孤独の回想
物語中盤、零の心理的な成長が丁寧に描かれます。高校に入学した当初の零は、昼休みに居場所がなく階段でひっそり時間を潰していたほど孤独でした。しかし今や、ひなたや友人たちと過ごす日常があります。林田先生の視点を通し、零が人間らしい感情を表に出すようになった変化にスポットが当たります。ひなたのことになるとムキになって走り出す零の姿を見て、林田先生は心から嬉しそうに「桐山、いいじゃないか」と目を細めました。かつては何事にもどこか冷めていて、自分の殻に閉じこもっていた零が、今では怒ったり喜んだりと感情豊かになっている――その違いに先生も成長を感じているのです。さらに零自身も、自分が“ひとりぼっち”でいることへの受け止め方が昔とは変わってきたと気づきます。かつては孤独に押しつぶされそうだった彼ですが、今では心に大切な居場所ができたことで、たとえ一人で居ても以前ほど辛くはない。むしろ晴れやかな気持ちで毎日を送れている自分に驚くのでした。
また、この巻では零の過去にもスポットが。当時の零を引き取って育ててくれた義父・幸田と、その妻(義母)のエピソードが回想として描かれます。視点は義母側。実子である香子と歩(零の義兄妹)は将棋の才能ある零に敗北し挫折…それを目の当たりにした義母は、いつしか零を「自分の子を追い詰めた外から来た子」として疎ましく思ってしまっていました。表面上は零を家族として受け入れていたものの、心の底ではわだかまりが消えなかった義母の苦しみが淡々と綴られます。このシーンは読んでいて非常に切なく、他人の才能に嫉妬し自分の平凡さに劣等感を抱く人間の弱さがリアルに胸に刺さりました。零には何の罪もないのに、義母は無意識のうちに零を遠ざけてしまう…。才能ゆえの孤独を幼い零も感じ取っていたのだと思うと、やりきれない気持ちになります。しかし零は今、その過去にも折り合いをつけようとしています。義母(零にとっては「親戚のおばさん」のような存在)に自分から挨拶に行ってみようか…と考えられるまでに心が前向きになっているのです。過去の傷と対峙しようとする零の心の変化に、彼の大きな成長を感じずにはいられません。
▼海中の大怪獣:入江との対局
第10巻で描かれる将棋の対局は、B級2組順位戦での桐山零 vs 入江八段の一戦。15歳でプロ棋士になり、わずか3年でB級2組に昇級した天才・零と、23歳で四段デビューしてから20年かけてB級2組まで上り詰めたベテラン・入江。あまりにも対照的な経歴を持つ二人の公式戦が描かれます。印象的なのは、この対局が入江の視点で語られる点です。序盤、観戦していた会長(日本将棋連盟会長)に「勉強させてもらいなさい」と茶化されても穏やかに受け流す入江。彼は子供の頃の遠泳大会での教訓「決してパニックを起こさないこと」「まずは落ち着く」を胸に、将棋でも常に冷静さを心がけてきました。実力者ではあるものの昇級スピードの遅かった入江は、地道にコツコツと経験を積んできた努力家です。そんな彼から見た桐山零という棋士は一体どう映るのか――物語は進みます。
対局が進むにつれ、入江は零との勝負中に不思議な感覚を抱きます。釣り好きの入江は、零との将棋を“巨大な魚と対峙する海中での闘い”に喩えました。かつて入江がタイトル保持者・宗谷名人(零が目標とする現将棋界最強の棋士)と初めて対戦した時、圧倒的強者に出会った衝撃を「大きく美しい生き物が一瞬で横をすり抜けていくようだった」と表現しています。今回の零との対局では、その“恐ろしく美しい生き物”と真正面から向き合っているような恐怖を覚えたのです。「次元が違う」――将棋歴23年の入江にそう思わせるほど、零の才能は規格外でした。盤上に深く深く潜り、静かに研ぎ澄まされた一手一手を指す零。入江は一瞬、若き日の宗谷名人と重なる零の姿に戦慄します。結局この対局の勝敗は作中では明示されませんが、描写から察するに零が勝利したことが伺えます。入江の視点を通して零の強さを際立たせた対局シーンは圧巻で、読者も「零ってこんなに凄かったのか!」と改めて驚かされるでしょう。天才ゆえに不安定だった零ですが、精神的に落ち着き成長したことで、その才能がいよいよ本領を発揮し始めているのかもしれません。プロ棋士として着実に実績を積み始めた零の今後に期待が高まるエピソードです。
▼嵐の前触れ:幸せを壊す影
穏やかな日常と熱い将棋の場面が描かれ、零も川本家の姉妹も充実した毎日を送っていた矢先、物語は一転します。川本家にこれまで姿を見せなかったある人物が突然現れ、平和な日常に暗い影を落とすのです。その日、川本家の大黒柱であるおじいちゃん(相米二)が作業場で倒れて入院してしまいました。あかりは看病や手続きに奔走し、ひなたとモモは留守番です。夕方、零はあかりに頼まれて病院帰りに必要な買い出しを手伝い、そのまま川本家へ荷物を届けに向かいます。ところが、いつも温かな雰囲気の家に入った零が感じたのは異様な緊張感。居間に足を踏み入れると、そこには怯えた様子のひなたとモモ、そして見知らぬ中年の男が一人座っていました――。
零ははっとします。以前にあかりから聞いた話、「ひなた達のお父さんは、新しい彼女ができて家を出て行ったの…」という言葉が脳裏に蘇りました。そう、この不審な訪問者の正体は、川本三姉妹の実の父親だったのです。家族を捨てて出て行ったはずの父・川本誠二郎が、祖父が入院で不在になった隙を狙ったかのようにノコノコと戻ってきたのでした。ニコニコと愛想よく振る舞う誠二郎ですが、そのタイミングと言い、振る舞いと言い、どこか薄気味悪さを感じさせます。読者も「絶対何か裏がある」と嫌な予感しかしません…。案の定、彼の口から出たのは身勝手すぎる提案でした。「もう一度ここで家族一緒に暮らそう。でも俺の今の家族も一緒に住むことになるから、心配だったらお前たちはおじいちゃんの所に移っていてもいい」――要するに「この実家の家は俺(父)と新しい妻子が住むから、お前ら娘は出て行け」という意味です。開いた口が塞がりません…😨。母と娘たちを捨てて家出した挙句、今さらしれっと戻ってきて図々しくも家を乗っ取ろうとは、一体何様なのでしょうか。
誠二郎は元々は穏やかで真面目な男でしたが、仕事のトラブルで一度躓いてから酒に溺れ、次第に「ダメ男」と化していった過去が語られます。最後には若い愛人を作り、妻だった桐江さん(姉妹の母)と娘たちを置き去りにして出奔。その後、桐江さんが病気で亡くなった時も葬式にすら現れなかったという最低ぶりです…。そんな過去がありながら、今さら父親面して戻ってきた誠二郎に対し、ひなたもあかりも動揺しつつも心のどこかで「お父さんだし…」という情を捨てきれずにいます。優しい彼女たちは、どんなに酷いことをされても完全に父を拒絶することができないのです。そこにつけこもうとする誠二郎…。彼は「家族」を盾にすれば娘たちは自分を追い出せないだろうと高を括っている様子でした。
▼零、男を見せる:揺るがぬ覚悟
その時、居合わせた部外者の零が立ち上がりました。いつもお世話になっている川本家を守りたい一心で、誠二郎に真正面から立ち向かったのです。まず零は、林田先生に協力してもらい誠二郎の現状を即座に調査。すると案の定、彼には裏事情が山ほど出てきました。誠二郎は現在、新たな女性問題で職場をリストラされ、しかも今の妻(愛人と再婚した相手)はもうすぐ二人目を出産予定で、社宅も追い出されそう…つまり自分たちの住む場所が無くなりそうだから娘たちを追い出して実家に転がり込もうという魂胆だったのです。この最低すぎる理由に読者は激怒💢。「なんて奴だ…!」と拳を握りしめたくなる展開ですが、同時に「零、やってしまえ!」と心の中で応援したくなります。
零は集めた情報を誠二郎の前で淡々と暴露し、ニコニコと嘘で誤魔化そうとしていた父親の仮面をはがします。突然自分の薄汚い事情を暴かれ逆上する誠二郎は「これは家族の問題だ!他人のお前には関係ないだろう!」と零を怒鳴りつけました。しかし零は一歩も引きません。静かに、しかしはっきりとこう言い返したのです。「いいえ。僕はひなたさんとの結婚を考えています。だから、他人事なんかじゃないんです!」――その瞬間、場の空気が凍りつきました。誠二郎は「プロポーズ…だと!?」と目を剥き、あかりも美咲おばさん(母方の伯母)もポカーン。当のひなたはみるみる顔を真っ赤に染めて硬直です。突然飛び出した零の電光石火のプロポーズ発言に読者もびっくり!🎉 そもそも零とひなたはまだ正式に付き合ってすらいない関係なのに、恋愛のステップを飛び越えて「結婚宣言」とは…零くん大丈夫か!?とツッコミたくなります。誠二郎にも「そんな段階踏み越えた告白で女の子が『はい』と言うわけないだろう?」と呆れられてしまいますが、零はひなたをチラリと見て「大丈夫、これから時間をかけて説得します!」とキリッと言い切るのでした。その自信はどこから…(笑)。恥ずかしげもなく堂々と言い放つ零に、あかりも美咲おばさんも思わず吹き出しつつ「頼もしいわね」と照れ笑い。修羅場だった川本家の居間は、零の衝撃発言のおかげで一瞬カオスな笑いに包まれます。
こうして、好きな女の一大事に男を見せた桐山零。父・誠二郎は完全に出鼻をくじかれ、分が悪いと見るや「仕切り直しだ」と捨て台詞を残して一旦引き下がりました。しかし彼は諦めていません。後日、学校帰りのひなたとモモの前に再び現れてつきまといます。ひなたは父の顔を見た途端に体が強張って動けなくなってしまいますが、そこへまたもや零が颯爽と駆けつけ、二人を守りました。さらに零は事前に美咲おばさんとあかりにも連絡し、「これから川本家で合流します」と宣言。川本家に戻ると、待っていた美咲おばさん(亡き母の姉)とあかりとともに、誠二郎と家族会議が始まります。もっとも誠二郎にとっては耳の痛い追及の場です。美咲おばさんも交え、零たちは誠二郎にこれ以上川本家をかき回さないよう話し合いを試みますが、彼は逆に「関係ない人間(零のこと)がいる」と零を子供扱いして排除しようとします。そこで零は毅然と言い放ちました。「僕の中で“大人”の最低条件は『自分で自分の身を立てられること』です」。図星を突かれた誠二郎に向かい、零は「あなたこそその条件を満たしていないのでは?」と冷静に反論します。さらに林田先生調べで判明した事実(再就職に失敗していること、新しい奥さんとの間にもゴタゴタがあること等)を次々突きつけ、誠二郎の無責任さを論破していきました。最後には「本当に家族のことを思うなら、あなたが娘さんたちにこれ以上頼らず自立するべきでは?」と大人の説教まで食らわせる始末。かつてはどこか頼りなげだった零が、心を鬼にして臆さず立ち向かう姿に、読者も胸が熱くなります。
結局、誠二郎は美咲おばさんたちから「法律的な手続きも辞さない」と念を押され退散。川本姉妹は零や伯母たちの奮闘でなんとか危機を切り抜けました。物語終盤、ぐったりと力が抜けたひなたに零が優しく声をかけます。突然の「結婚宣言」についてひなたが赤面しつつ「び、びっくりしたよ…!」と抗議すると、零は「ごめん、ひなたを守りたい一心で…でも本気でそう思ってるから」と真っ直ぐに伝えました。互いに顔を真っ赤にしながらも見つめ合う二人。その隣では、美咲おばさんとあかりが苦笑しつつも「零くん、頼もしくなったわね」と感心しています。こうして嵐のような一日が過ぎ、川本家には再び静かな日常が戻りました。しかし零が残したあの一言は皆の心に大きな余韻を残します…。第10巻は、川本家のトラブルという衝撃の展開と、そこで垣間見えた零の揺るぎない覚悟(そしてまさかの告白!)で幕を閉じます。
感想
第10巻、一言で表すなら「涙あり笑いあり、胸アツな神回!」でした。序盤では、いじめを乗り越えたひなたが笑顔で学校生活を送る様子に、本当に良かった…!とこちらまでウルっときてしまいました。前巻まで辛い状況に耐えていたひなたが、新しい友達と穏やかな日常を楽しんでいる姿には、読者としても感情移入せずにいられません。零と一緒にお弁当を食べるシーンでは、「やっと報われたね」と心がほっこりしました😊。零も嬉しそうで、その表情にこちらまでニヤニヤ。いじめ編が長く続いただけに、ひなたの笑顔が戻った今巻の序盤は、ファンにとってご褒美のような暖かいシーンの連続でした。
一方で、零の青春暴走モードには思わず吹き出しました。ひなたに近づく男子を全力で追い払おうとする零…あの将棋部でのシーンはギャグ漫画かと思うほど面白かったです😂。普段クールな零が露骨にジェラシーを燃やすギャップが可愛くて、「零も年相応の高校生なんだなぁ」と親近感が湧きました。林田先生に「器ちっちゃ!」とツッコまれて赤面する零には思わずクスッ。シリアスな展開だけでなく、こうした青春コメディ要素があるのも『3月のライオン』の魅力ですね。
そして何と言ってもクライマックスの父親騒動。正直、読んでいて怒りで拳が震えるほど感情移入してしまいました。川本家の父・誠二郎の身勝手さには「ふざけるな!」と憤慨しましたが、それ以上に零の奮闘に胸が熱くなりました。大好きな川本家を守るため、怖い大人相手にまっすぐ立ち向かう零の姿は本当にかっこよかったです…!かつては自分に自信が持てず悩んでばかりだった彼が、今や誰かのためにここまで強くなれるなんて、成長したなぁと感無量でした😭。零が放った容赦ない正論の数々には「よく言った!」と思わず拍手。クズ父を論破するシーンは痛快で、読後はスカッとしました。
零の電撃プロポーズ発言については、驚きすぎて開いた口が塞がりませんでした(笑)。まさかこのタイミングで「結婚します!」なんて言うとは…!初読時は「ええーっ!?」と声に出してしまいましたが、同時にあの場の緊迫感がふっと和らいで笑いに転じた瞬間でもあり、絶妙な演出だと感じました。シリアス一直線で終わらせず、読者にホッと笑顔をもたらしてくれるところが羽海野チカ先生らしいですよね。零くん、不器用だけど本当に真っ直ぐで優しい子なんだなあと再認識しました。ひなたに対するまっすぐすぎる気持ちにはニヤニヤが止まりませんし、顔を真っ赤にする二人の初々しさも微笑ましい限りです。あの大胆告白にはネット上でも「零くん男前すぎ!」「プロポーズ早すぎて吹いた」なんて大盛り上がりでした。
気になった点としては、父親のクズっぷりがあまりに極端で若干フィクション感が強いところでしょうか。ここまで救いようのない悪役だと現実味は薄いものの、その分徹底的に懲らしめられる展開に振り切っているので物語としては爽快でした。また、一部では「零が完璧すぎるヒーローでは?」という声もあるようです。確かに高校生にして年収ウン百万のプロ棋士という立場で、家族を守るため論理武装までして乗り込んでいく様子は出来すぎに見えるかもしれません。でも個人的には、零も完璧超人ではなく内心必死だったと思うし、勇気を振り絞って頑張ったんだよね…!と素直に応援したくなりました。そもそも彼自身が過去に家庭に恵まれず辛い思いをしてきたからこそ、川本家を守りたいという気持ちは痛いほど分かるので、あの行動には胸が熱くなりました。
将棋の対局シーンについても触れておきたいです。入江八段視点で描かれた零との対局は、静かな迫力があって引き込まれました。普段地味な印象の入江さんが心の中で必死に食らいついている姿や、「でかくて恐ろしく美しい生き物」と零を表現した描写は印象的です。零=怪物級の才能を持つ棋士だと再認識させられましたし、零本人の成長も相まって今後どこまで強くなるのかとワクワクしました。ただ、将棋の専門的な部分はやや難しく感じる読者もいるかもしれませんね。私自身プロの棋譜を細かく理解できるわけではありませんが、羽海野先生の描き方が上手なのでしょう、入江さんの心理描写を読むだけで手に汗握り「頑張れー!」と応援していました(笑)。専門知識がなくても物語に没入できるのは本作の凄いところだと思います。
全体的に、第10巻はエモーショナルな見どころ満載で大満足でした!前半のほのぼのパートで温められ、中盤でしんみり考えさせられ、後半は怒涛のバトルとカタルシス、最後にほっこり笑顔という、感情がジェットコースターのように揺さぶられる展開でした。読んでいて飽きる暇がありませんし、ラストは本当に心が震えました。涙あり笑いありで「これだから3月のライオンはやめられない!」と改めて惚れ直した一本です。個人的には文句なしの★5評価をつけたい神回でした!
考察・解説
第10巻では、物語全体のテーマである「家族」と「孤独」がより深く掘り下げられていたように思います。零は実の家族を幼くして亡くし、義理の家族にも完全には受け入れられず孤独に生きてきました。そんな彼が川本家の人々と出会い、疑似家族のような絆を育んできたのがこれまでのストーリーです。そして今巻、零は川本家を「自分の大切な家族」として守ろうと決意しました。血の繋がりは無くても、零にとって川本姉妹はかけがえのない心の家族に他なりません。その想いが極限状態で「結婚を考えています」という言葉に結実したのだと思います。プロポーズ発言は突飛にも見えますが、要するに零は「僕もこの家族の一員だ」という強い意志表示をしたかったのでしょう。過去に居場所を失った経験のある彼が、今度は自分の意思で大切な人たちの居場所を守り抜こうとする…この成長譚には胸が熱くなりました。
一方、川本姉妹の父・誠二郎は「血縁上の家族」ですら絆を簡単に踏みにじる存在として描かれています。家族とは本来支え合うものなのに、彼は自分の利益のために娘たちを利用しようとした。その姿は読者から見ても明らかな悪ですが、現実にも残念ながら存在し得る類型ですよね。羽海野チカ先生は彼を極端なまでに身勝手な人物として描くことで、「たとえ血が繋がっていても、情があっても、断ち切るべき縁はある」というメッセージを暗に込めているのではと感じました。日本では法律上なかなか親子の縁は切れませんが、少なくとも心の上では彼女たちはこの父親と決別し、新しい家族(零や伯母たち)と歩んでいくのでしょう。実際、第10巻ラストでの川本家には、血縁よりも強い愛情の絆が確かに存在していました。零が守り抜いたその絆こそ、本当の家族と言えるのではないでしょうか。
また、今巻は零の過去(義母との確執)にも触れられましたが、義母もまた「親の愛の歪み」を体現するキャラクターでした。自分の子供が他所の子(零)に才能で敵わなかったことを受け入れられず、無意識に零を疎んでしまった彼女。こちらは誠二郎と違い一概に非難できない人間臭さがあります。親であれば誰しも我が子が一番大事、とはいえ他人を傷つけていい理由にはならない…この辺りの葛藤を、羽海野先生は義母のモノローグでリアルに表現していました。「正しいこと」だけでは割り切れない人の心の闇を描きつつも、零と義母それぞれが前に進もうとする希望も描かれていて、非常に考えさせられます。誠二郎のような純然たる悪役がいる一方で、義母や入江八段のように弱さや苦悩を抱えた脇役たちも登場し、物語に深みを与えていました。
そして恋愛面でも大きな転機となった巻でした。以前から「零はひなたのことをどう思っているの?」という話題は劇中でも読者の間でも度々上がっていました。あかりと美咲おばさんの見立てでは「零くんにとってひなたは恋愛じゃなく家族みたいなものだろう」ということでしたが、その予想はある意味当たりで、ある意味外れましたね。零はひなたを「家族」にしたい=結婚したいと思うほど大切に想っていた…!恋愛感情なのか家族愛なのか、その境界線すらも飛び越えて「一生守りたい存在」としてひなたを見ている零にキュンとしました。とはいえ、当の二人はまだ高校生で交際すらしていない状況ですから、いきなり結婚云々はさすがに早計です😂。この辺り、羽海野先生もあえてコメディタッチで描いており、シリアスな中にもクスッと笑える絶妙なバランスに感心します。零の唐突発言には読者も「ちょっと飛ばしすぎでは!?」と驚きつつ、でも二人の将来を想像してほっこり…という、不思議な高揚感がありました。今後、零とひなたがお互いをどう意識していくのか、恋愛面の進展も目が離せません。
メディアミックスの観点では、第10巻のエピソードはアニメ第二シリーズ(NHK版アニメの2期)でも描かれました。スタジオシャフト制作のアニメ版は独特の映像演出で有名ですが、川本家の父が登場するシーンの緊迫感や、零の迫力あるセリフ回しはアニメでも非常に見応えがありました。特に零役の河西健吾さんと誠二郎役の伊勢谷友介さん(※アニメではなく実写映画での配役ですが)の熱演で、あの対決シーンは鳥肌ものでした。紙面上の漫画で読んだ時とはまた違った臨場感があり、原作を知っていても手に汗握りましたよ。アニメ派の視聴者からも「零くん格好良すぎ!」「この回は神回」と絶賛されており、SNSでもかなり話題になったエピソードです。また、2017年公開の実写映画版(二部作)でもおおよそこのあたりのストーリーが描かれています。映画版では神木隆之介さんが零を演じ、川本ひなた役は清原果耶さん、あかり役は倉科カナさんと豪華キャストでした。実写では漫画やアニメとはまた違うアプローチで、父親との対決シーンがどう描かれたのか興味深いところです(※映画後編では父親役の俳優・伊勢谷友介さんによるリアルなイヤミっぷりが光っていました)。原作を読んだ後に、アニメや映画で名シーンを見比べてみるのも面白いかもしれません。
最後に、タイトル『3月のライオン』について少しだけ考察を。本作のタイトルはことわざの「3月はライオンのようにやってきて、子羊のように去る(March comes in like a lion, and goes out like a lamb)」に由来しています。厳しい冬の終わりから穏やかな春への移ろいを指す言葉ですが、物語においても零の心情が冬から春へ変化していく様子や、作品全体のトーンを象徴しているように思えます。第10巻は零にとってまさに冬の終わりとも言える転機で、彼の心には暖かな春(家族の愛)が訪れました。辛く孤独だった季節を経て、これから彼はどんな新しい季節を迎えるのか…タイトルに込められた意味を噛み締めながら、続きを楽しみに待ちたいと思います。
読者の反応
第10巻発売当時、SNSやレビューサイトでも本巻の内容は大きな話題となりました。特に零の活躍と衝撃的な展開について、多くの読者が熱い感想を寄せています。以下に世間の反応の一部をまとめてみました。
ポジティブな反応 📣
- 「零くんがかっこ良すぎて涙出た…!川本家を守る姿に感動!」
- 「ひなたの笑顔が戻って本当に良かった。自分のことのように嬉しい🥲」
- 「ラストのプロポーズ展開ビックリしたけど拍手喝采!最高の締め!」
- 「林田先生のネーミングセンス(妻子捨男w)にクスッとした😂良いスパイス!」
- 「零の成長ぶりに胸が熱くなった。あの子、本当に強くなったなぁ…」
ネガティブな反応 📣
- 「お父さんのシーン、読んでてストレス溜まった…悪すぎてキツい」
- 「零が出来すぎヒーロー感あるかも。高校生にあそこまでさせるのは現実味ないかな」
- 「いきなり結婚宣言は唐突すぎでは?ちょっと笑っちゃった」
- 「将棋の試合もっとじっくり読みたかった。心理描写中心で物足りないとの声も」
- 「全体的に綺麗にまとまりすぎてて、逆に共感できない人もいるかもしれない」
総評💬
圧倒的に多かったのは「最高に面白かった!」「号泣した!」といったポジティブな声でした。特に零の男前な活躍には称賛が集中し、「主人公がこんなに頼もしく見えたのは初めて」と感激するファンが続出。ひなたの笑顔や零の告白に「自分まで嬉しくなった」「キュンとした」といったコメントも目立ち、第10巻が多くの読者の心を動かしたことが伺えます。一方で、誠二郎の描写があまりに極端だったため「読んでいて辛かった」「不快だった」という意見も少数ながら見られました。また、零がヒーロー然としすぎていて現実離れしているという指摘や、超展開に笑ってしまったという反応もあり、衝撃的な展開ゆえに賛否両論が巻き起こった部分もあったようです。とはいえ、「それだけ感情移入した証拠」「作者の描写力が凄い」というフォローの声も多く、ネガティブ意見も含め本巻が大いに議論を呼んだこと自体、作品の熱量を物語っています。総じて第10巻はファンの間で「神回」「名エピソード」との呼び声も高く、発売直後からTwitter上でもトレンド入りするほどの盛り上がりを見せました。
次回への期待
怒涛の展開で幕を閉じた第10巻。この結末を受けて、「次はどうなるの!?」と気になった方も多いのではないでしょうか。まず、川本家の父・誠二郎という不安要素が今後どう動くのかが注目ポイントです。一応は撃退できたものの、あの様子では懲りていないでしょうし、法的手段に訴える可能性もゼロではありません。第11巻以降で、彼との決着がどのようにつくのか見守りたいところです。あかりと美咲おばさんという大人たちが付いていますから、もう姉妹を傷つけさせないと信じたいですが、果たして完全に追い払えるのか…。ハラハラしますが、川本家の平穏が戻ることを願わずにいられません。
そして零とひなたの関係にも要注目です!零が思わず飛び出してしまった「結婚を考えている」発言を受けて、二人はこれからどうなっていくのでしょうか。零は本気とは言いつつも、告白すっ飛ばして結婚宣言してしまった手前、改めてひなたに気持ちを伝え直すのか、それともこのまま少し照れくさい関係が続くのか…青春ラブコメ的な展開も期待してしまいますよね。ひなたもまんざらではなさそう(?)でしたが、突然のことに戸惑っているはず。次巻では二人が今回の件についてどんな会話を交わすのか、ドキドキが止まりません。お互い意識してしまって赤面する初々しいシーンなんかも見てみたいですし、もし付き合うことになったら川本家は大騒ぎでしょうね!😊
零自身の物語としては、今後ますます将棋の戦いが熱くなっていきそうです。B級2組での快進撃や、いずれ来るであろう宗谷名人への挑戦など、棋士・桐山零の活躍からも目が離せません。精神的に安定し強さに磨きがかかった零が、この先どんな対局を見せてくれるのか非常に楽しみです。二階堂とのライバル対決や、師匠格の島田八段とのエピソードももっと読みたいですね。将棋の世界で零が頂点に登りつめる日は来るのか、ファンとして期待が高まります。
第11巻以降では、川本家の家族問題がひと段落し、物語の軸がまた将棋や零自身の将来に戻っていくかもしれません。しかし一度生まれた川本家と零の強い絆は、これからも物語の柱であり続けるでしょう。ひなたの高校生活や、川本家の日常の温かさも引き続き描かれるはずです。個人的には、零が義母(幸田家の母)に会いに行くフラグも立ったので、そちらの決着も気になります。過去と向き合い乗り越えた時、零はさらに成長できるのではないでしょうか。
いずれにせよ、第10巻は物語に一区切りついた重要な回でした。次巻ではどんなドラマが待っているのか、今から想像が膨らみますね!零と川本家の未来、そして将棋界での更なる飛躍を期待しつつ、続巻を心待ちにしたいと思います。
関連グッズ紹介
『3月のライオン』の世界をもっと楽しみたい方や、第10巻で盛り上がった方にぜひチェックしてほしい関連アイテムをいくつかご紹介します。作品の魅力が詰まった公式本や映像作品、ファンなら手に入れたいグッズなど、読み終えた後も余韻に浸れるものばかりです♪
- 『3月のライオン おさらい読本 中級編』 – 羽海野チカ先生監修のオフィシャルファンブック第2弾。第6巻~第11巻までの内容を振り返り解説してくれる一冊です。各巻の名シーンや設定の解説はもちろん、読者投票による人気キャラランキング、羽海野先生とプロ棋士・羽生善治さんとの対談など貴重な企画も収録。レシピ再現コーナーでは川本家の美味しそうな料理の数々がカラー写真付きで掲載されていて、お腹が空いちゃいます…!第10巻の内容もしっかり網羅されているので、読後に手に取れば新たな発見があるかもしれません。
- TVアニメ『3月のライオン』Blu-ray/DVD – 川本家のエピソードや将棋の名勝負が美麗なアニメーションで蘇る!第10巻のエピソードはNHKで放送されたアニメ2期(第22話~あたり)に対応しています。零と誠二郎の対決シーンは、緊迫感あふれる演出と声優さんたちの熱演で漫画以上の迫力。背景美術や音楽も素晴らしく、原作ファンにもぜひ観てほしいクオリティです。Blu-ray/DVDには音声特典やキャストコメンタリーも収録されており、映像で『3月のライオン』の世界に浸りたい方にオススメです。
- 第10巻 特装版(BUMP OF CHICKEN「ファイター」CD付き) – 実は第10巻にはCD付き特装版が存在します!人気バンドBUMP OF CHICKENが本作のために書き下ろしたテーマソング「ファイター」を収録した豪華仕様。この曲はアニメでもエンディングテーマとして使用され、歌詞にも原作へのリスペクトが込められていると話題になりました。疾走感と切なさが同居する名曲で、零たちの姿と重ね合わせて聴くと胸に迫るものがあります。限定版のため入手困難になりつつありますが、音楽から作品の世界を感じたい方はチェックしてみてください。
- 実写映画『3月のライオン 前編/後編』DVD – 神木隆之介さん主演で話題となった実写映画版(2017年公開)のDVDです。二部作構成で、原作の序盤から本記事で扱ったエピソード付近までが描かれています。映画ならではの迫力ある将棋シーンや、俳優陣の熱演による川本家の温かさは一見の価値あり。特に後編では第10巻相当のクライマックスが映像化されており、零と川本家の絆に号泣必至です…。原作ファンも、新たな視点で物語を楽しめる実写版をぜひ鑑賞してみてください。
- その他グッズ – 『3月のライオン』は人気作品だけあって関連グッズも豊富です。劇中に登場するかわいい将棋の駒のストラップや、零が着ているジャケットやカーディガンをイメージしたファッションアイテム(※以前コラボで発売されました)、川本家のネコたちのイラストがあしらわれた文具など、ファン心をくすぐる商品がたくさん!公式ショップやイベントで入手できることがあるので、興味のある方はチェックしてみると楽しいですよ。お部屋に飾れば、いつでも作品の世界観を感じられること間違いなしです♪
まとめ
『3月のライオン』第10巻は、物語に大きな転機をもたらした重要回でした。ひなたの笑顔に癒やされ、零の成長に胸を打たれ、そしてクライマックスでは衝撃の展開に心が震える…まさに「泣けて笑えて熱くなる」珠玉の一冊だったと思います。零が見せた勇気と覚悟には★5つでは足りないほどの称賛を送りたいです!あのプロポーズ(?)には驚かされましたが、零と川本家の固い絆を改めて実感でき、「家族って血の繋がりだけじゃないんだ」と深く考えさせられました。
物語はここで大きく動きましたが、まだまだ続きます。零の棋士としての戦いも、ひなたとの関係も、気になることだらけで今後の展開から目が離せません!次巻では川本家に本当の平穏が訪れるのか、零はさらに飛躍していくのか、ワクワクが止まらないですね。引き続き応援&読了決定です📚✨
最後に…皆さんは第10巻を読んでどう感じましたか?特に心に残ったシーンや共感したことなど、ぜひコメントで教えてください♪ 感想や考察を語り合って、もっと『3月のライオン』の世界を楽しみましょう!この記事が面白かったと思ったらSNSでシェアしていただけると嬉しいです😄ではでは、次回の第11巻レビューもお楽しみに!