今回この記事では、第1回ダ・ヴィンチ「本の物語」大賞<大賞>受賞作の『初恋は坂道の先へ』について、感想・書評を中心に紹介します。
著者の藤石波矢さんはこの作品でデビューをされており、この作品の他に、連続ドラマ化や漫画化された代表作『今からあなたを脅迫します』も執筆されています。映画『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』にもなっているネメシスシリーズの本もいくつか執筆されています。
ものすごく面白い!名作!、という感じではないかもしれませんが、テンポよく読めて爽やかな読後感が得られる作品ですので是非皆さんにもおすすめしたい作品です。
Contents
【プロフィール】著者:藤石波矢(ふじいしなみや)さんについて
今回紹介する『初恋は坂道の先へ』の著者である藤石波矢さんは、1988年栃木県生まれで、栃木県立鹿沼東高等学校、大正大学文学部、東京ビジュアルアーツ映画学科を卒業されています。
2014年に『初恋は坂道の先へ』で第1回ダ・ヴィンチ「本の物語」大賞<大賞>を受賞しデビューされています。
連続ドラマ化、漫画化された代表作『今からあなたを脅迫します』の作者で、以下の作品を執筆されています。
- 今からあなたを脅迫します
- 昨日の君は、僕だけの君だった
- 救ってみろと放課後は言う
- 撮影現場は止まらせない! 制作部女子・万理の謎解き
- 時は止まったふりをして
- 流星の下で、君は二度死ぬ
- 神様のスイッチ
登場人物の軽妙なセリフ回しや独特な描写、その中にミステリー要素を取り入れていることが特徴で、読者が自然と謎解きしてしまうような作品が多いかなと感じます。
Twitterもやられているので、興味のある方はフォローしてみてください。
【登場人物、あらすじ】『初恋は坂道の先へ』について
彼女が消えた。一冊の本とともに。小学校の教師をしている研介。一冊の本が届いた日、恋人が失踪した。本の送り主は彼女の「忘れられない初恋相手」か?田舎町に暮らす中学生の本好き女子は、敬愛する小説家の家で不登校児と出会った。彼は祖父の著書をばらばらにする謎の行動をしており、初めは馴染めなかったが、徐々に交流を深めていく。
引用元:角川文庫『初恋は坂道の先へ』裏表紙より
本作品は、小学校教師をしている主人公 芹澤研介(25歳)の恋人である寺坂品子(24歳)に一冊の本が届き、その後彼女が失踪したところから始まります。
そして、田舎町に暮らす中学生のしなこちゃん、小説家と不登校児との交流が進んでいく話が、交互に進んでいきます。
恋人がなぜ失踪したのか、そして、二つの話が交互になぜ進んでいくのか、を考えながら読み進めていく作品です。
タイトルの”坂道”にもなっている、“目をつむって走り抜けると10年後の自分が見える”という伝説のある「未来坂」。そしてもう一つタイトルのキーワードとして入っている"初恋"について様々な登場人物の記憶、気持ちを通じて、どう話が進んでいくのか興味が持てるところです。
読み進んでいくと、話の展開に「あれっ」と驚く場面がありました。”青春小説×ミステリー”というキャッチコピーがぴったりな作品になっています。ただし、あまりミステリ色を期待しすぎると物足りなさを感じるかもしれませんので、青春小説に少し「謎」がトッピングされている作品として読んでいくと楽しめると思います。
【感想、書評】『初恋は坂道の先へ』を読んで感じたこと
私がこの本を読んだきっかけは、著者:藤石波矢さんの作『今から君を脅迫します』を読んで、登場人物の軽快なやりとりや、ストーリーが好きになり、他の作品を読んでみたいと思ったからです。
この物語は、失踪した彼女を探すストーリーと、田舎町に住んでいる本好き女子と小説家や不登校児との交流を描いたストーリーの、大きく2つのストーリーが交互に展開されていくところが特徴的です。
特に個性の強い登場人物がいるわけでもないのですが、不思議と一人一人がしっかりと心に残る作品でした。また、なんかどこかで見たことあるような物語だなと思いながら読んでいたら、作中で本人が突っ込んでいて少しクスっとしてしまいました。
私がいいなと感じた点は、
- 中学生の爽やかで甘酸っぱいような交流の描写。
- なぜ2つのストーリーが並行展開されているのかな、と謎解き要素がありながらも、本筋の青春・恋愛要素を十分楽しめるバランスが絶妙。
- 何かやりたいことがあったときに、応援してくれる人がいることで頑張れるということに気づかされた。
です。
私は、中学生時代というのは良い思い出ばかりではないですが、多感な時期だったことや、今回のストーリーに通じるようなやりとりなどを思い出し、ほろっとした気持ちになりました。
今回この本を読むときに、あまり前情報無く手に取り、青春、恋愛の小説かなと思いながら読みましたが、2つのストーリーの関連性がわかったときは「やられたっ」と楽しい驚きがありました。あとでネットで調べたときに”青春小説×ミステリー”という文言を見て「なるほど」と思いつつも、青春小説特有の爽やかな読後感だったのが素敵だと感じました。
また、何かやりたいことがあっても、自分一人だと孤独感が強くやりきることができない経験が私にはいくつかあるのですが、誰かの応援と相まってとにかくがむしゃらにやってみようというような場面がとても強く印象に残りました。最近、歳を重ねるごとに特に思うのが、いろいろな人達との出会いや、そこでのやりとり、言われたことというものが、人生を過ごすうえでとても力になっていくということです。この本を読んでその思いがより強くなりました。
ものすごく面白い!という印象ではないのですが、まだ読んだことのないこの作者の別の作品を読んでみたい、 ダ・ヴィンチ「本の物語」大賞の他の作品を読んでみたいと思いました。
非常に読みやすい物語で、途中で休もうと思うことなく次が気になって一気読みしました。誰かが傷ついたり辛くなるようなエピソードは無く、読んだ後も、爽やかな気持ちよさが残る良い作品です。ストーリー展開を楽しみたい方にもぜひおすすめしたいです。
レビューサイトでの評価をまとめてみました。テンポよく読めて驚きも楽しめる反面、少し内容が軽く感じるかもしれませんが、あまりミステリーとして期待しすぎずに読むとすっきりとした読後感などを楽しめる作品なのかなと感じました。
良い評価(他レビューなどから抜粋)
- 登場人物が多く楽しく読めた。
- 普通の登場人物なのに一人一人が生き生きとしていて心に残る
- 最後で、はぁーなるほど!って感じて、思わず前を読みなおしたりして楽しめた。
- テンポが良くサラッと読める。
- 希望を感じさせる文章により、とても前向きな気持ちになれた。
- すっきりさっぱりしてて読んでよかったと思える、爽やかでなかなかいいミステリ。
悪い評価(他レビューなどから抜粋)
- 登場人物の性格がイマイチ。
- タイトルと表紙が好きではない。
- 内容が軽い、薄い。
- ミステリとして期待しすぎて読むと期待外れ。
- トリックがせこい。
【発行、カバーなど】『初恋は坂道の先へ』の関係者の方の紹介
私が読んだ角川文庫の著者以外の情報は以下の通りです。
発行者:郡司 聡
カバー写真:佐藤 里香、青山 裕企
発行:株式会社KADOKAWA
印刷所:朝日印刷株式会社
製本所:株式会社ビルディング・ブックセンター
表紙画:和田 三造
モデル:shohei、金森 優花
カバーデザイン:川名 潤
まとめ
今回は、藤石波矢さんのデビュー作である、第1回ダ・ヴィンチ「本の物語」大賞<大賞>受賞作の『初恋は坂道の先へ』について、感想・書評を中心に紹介しました。
テンポよく読めて、登場人物の軽快なやり取りは結構好きですっかり藤石波矢さんのファンになってしまいました。爽やかだけど少しミステリ色のあるストーリーを楽しみたい方にはもってこいの作品としておすすめします!
他の作品についても以下に記載しましたので参考にしてください。藤石波矢さんの他の作品も読んで記事にまとめていきたいと思います!
【おすすめ】藤石波矢さんの他の作品を読む観る
今回紹介した『初恋は坂道の先へ』の著者である藤石波矢さんは、今回以外にも以下の作品を執筆されています。
この記事を執筆している時点で『今からあなたを脅迫します』シリーズ、『ネメシス』シリーズは読んだことがありますが、他の作品も少しずつ購入して積まれているので、読んだ感想などは同じように記事にしていきたいと思います。
『今からあなたを脅迫します』
代表作となった『今からあなたを脅迫します』シリーズは、連続ドラマ化され、奈院ゆりえさんにより、漫画化(KCデラックス なかよし)もされています。
『昨日の君は、僕だけの君だった』
『救ってみろと放課後は言う』
『撮影現場は止まらせない! 制作部女子・万理の謎解き』
『時は止まったふりをして』
『流星の下で、君は二度死ぬ』
『神様のスイッチ』
『ネメシス』
映画『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』にもなっているネメシスシリーズの本もいくつか執筆されています。全7巻で完結しているので、興味のある方は是非1巻から読むことをお勧めします。私はまだドラマのネメシスシリーズを観れていないので、これから観てそちらの感想等も記事にしていく予定です。