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(あらすじ・感想)『最後のトリック』(2014年)をヨム!天才×異端が織りなす“論理の罠”に挑め!

あなたはミステリー小説を読み終えたとき、「自分が犯人だった!」と思わされた経験はあるでしょうか?深水黎一郎さんのデビュー作『最後のトリック』は、なんと「犯人はこの本の《読者全員》!」と堂々と宣言した異色の本格ミステリーです。天才と異端が生み出す前代未聞の“論理の罠”に、読者自らが挑むことになるこの物語は、発売から10年を経てもなお多くの読者を驚かせ続けています。

本作を手に取る前は、「読者が犯人」という大胆すぎるコンセプトに半信半疑でした。しかし読み進めるうちに、その奇想天外な仕掛けと巧妙な論理展開にぐいぐい引き込まれ、読み終えた今では心地よい衝撃と興奮が残っています。ネタバレなしでも楽しめる範囲で、本記事では『最後のトリック』の魅力と読後の深い考察をお届けします。ミステリー好きの大学生以上の皆さん、次に読む一冊の候補としてぜひ参考にしてみてください。

著者紹介:深水黎一郎という仕掛け人

深水黎一郎(ふかみ れいいちろう)さんは1963年山形県生まれのミステリー作家です。慶應義塾大学文学部でフランス文学を専攻し、その教養と芸術への造詣を作品にも活かしています。2007年、イタリア語で「究極のトリック」を意味する『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』で第36回メフィスト賞を受賞しデビュー。このデビュー作こそ、加筆修正を経て改題された文庫版『最後のトリック』であり、累計33万部を超えるベストセラーとなりました。その後も2011年『人間の尊厳と八〇〇メートル』で第64回日本推理作家協会賞を受賞するなど、着実にキャリアを重ねています。

深水さんの作風は、豊かな想像力と巧みな技巧、そして緻密に張り巡らされた伏線に特徴があります。フランス文学を主修した経歴から、美術や音楽など多彩な知識をミステリーの筋立てに盛り込むことも得意です。中でも本作『最後のトリック』は、深水さん自身が少年時代から30年以上あたためてきたという特別なテーマに挑んだ意欲作です。小学生の頃に読んだ入門書で「ミステリー界に残された最後の意外な犯人は『読者』である」と知って以来、その“不可能トリック”をどう実現するかを人生の宿題のように考え続けたと語っています。そしてある日ついに「これならいける!」というアイデアを思いつき、本作執筆に踏み切ったそうです。この並外れた情熱と発想力が生み出した『最後のトリック』は、巨匠・島田荘司氏からも「まれに見る野心作であり傑作」と称賛される唯一無二の作品となりました。

登場人物紹介:論理の舞台を彩るキーパーソン

  • 「私」(主人公) – 本作の語り手であり主人公。新作アイデアに行き詰まり悩む小説家です。次回作を新聞連載する予定ですが、肝心のプロットが決まらずスランプ状態に陥っています。そんな折、香坂誠一から奇妙な手紙が届いたことで、想像もつかない事件の渦中に巻き込まれていきます。冷静沈着なプロ作家である一方、手紙の内容に好奇心と疑念を抱き葛藤する人間的な面も魅力です。
  • 香坂 誠一(こうさか せいいち) – 主人公に手紙を送りつけてきた謎の男。その手紙には「“読者が犯人”になるミステリーのアイデアを2億円で買ってほしい」と書かれていました。香坂は「命と引き換えにしても惜しくないほどのトリックだ」と切実に訴えてきます。しかし彼自身は過去に殺人容疑をかけられ失踪中という不穏な人物。天才的な発想を持ちながらも常軌を逸した「異端者」であり、本作の鍵を握る存在です。彼の真意と運命が物語のクライマックスで明かされます。
  • 捜査一課の刑事 – 警視庁捜査一課の刑事。香坂誠一が関与した殺人事件の捜査のため主人公を訪ねてきます。香坂と主人公の接点に勘づき、執拗に聞き込みを行うタフな刑事です。物語中盤から登場し、フィクションだったはずの「アイデア話」が現実の事件へと繋がっていく緊張感を生み出します。刑事の登場によって物語は一気に推進力を増し、読者も主人公と共に現実の事件に向き合うことになります。
  • 古瀬博士と双子姉妹 – 古瀬(ふるせ)博士は超心理学(パラサイコロジー)研究の権威であり、物語中で描かれるもう一つのエピソードの中心人物です。彼は双子の少女を被験者にテレパシー実験を行っており、その模様が章ごとに挿入されます。古瀬博士は超能力の実在性について熱心に語り、双子のシンクロ現象を検証していきます。最初は主人公たちの事件とは無関係に思えるこの超心理学パートですが、物語終盤で意外な形で主軸と結びつき、大きな意味を持ってくることになります。

あらすじ(※ネタバレなし)

売れない小説家の「私」は、新聞連載を目前にしながらも斬新なアイデアが浮かばず苦悩していました。そんなある日、「私」の元に一本の手紙が届きます。差出人は香坂誠一という見知らぬ人物。手紙の中で香坂は、「ミステリー界最後の不可能トリック『読者が犯人』のアイデアを2億円で買ってほしい」と持ちかけてきました。前代未聞の提案に戸惑う「私」でしたが、香坂は「命と引き換えにしても惜しくないほどの価値がある」とまでそのトリックを絶賛し、執拗に取引を求めます。アイデアの詳細は明かされないまま、「読者が犯人」という言葉だけが独り歩きし、好奇心を刺激された「私」は返事を保留しつつも興味を抑えきれません。

やがて警察の刑事が現れ、香坂誠一が殺人事件の容疑者として指名手配され失踪中であることを知らされます。突然浮上した現実の事件に、「私」は香坂との関わりを疑われながらも、彼の行方と謎を追わざるを得なくなります。一方で物語はもう一つの顔を見せます。章が変わるごとに挿入されるのは、古瀬博士による双子姉妹の超能力実験シーン。念じ合う双子、念写やテレパシーの科学的検証――一見すると香坂の手紙とは関係ないこの場面が丁寧に描かれていきます。

こうして、小説家と謎の手紙、そして超心理学の実験という二つの異なる物語が交互に進行していきます。香坂の真意は何なのか?彼が提示した「読者が犯人」という前代未聞のトリックとはどんなものなのか?古瀬博士の実験とどう結びつくのか?次第に迫る香坂の影と、明かされていく超能力の真相。物語がクライマックスに差し掛かる頃、これらのピースが一本の線で繋がり、読者は思わず息を呑むことでしょう。ラスト一行まで予断を許さない展開の末、本を閉じたとき、あなたはきっと「犯人は自分だ…!」と戦慄するはずです

感想:驚きと賛否両論…読後に残るもの

読み終えてまず感じたのは、「ここまで大胆な仕掛けをよくぞ小説という形で実現したな」という驚嘆でした。序盤から提示される「読者が犯人」というコンセプト自体がネタバレ同然なので物語として成り立つのか不安でしたが、実際には“犯人が読者である理由”が最大の謎となり、最後まで好奇心を掻き立てられました。深水さんはトリックの答えを先に提示しつつも、読者を「なぜ?どうやって?」という思考の迷路に誘い込みます。その巧妙なプロット構成に、ミステリーファンとして素直に唸らされました。「読者全員が登場人物になる」という奇抜すぎるアイデアも、物語の論理の中でしっかりと筋が通っており、読み終えればタイトルの真意に思わずニヤリとしてしまいます。

一方で、感じた課題もいくつかあります。特に前半の超心理学パートは科学講義のような調子で進むため、人によっては退屈に映るかもしれません。実際、超常現象に詳しくない読者にとっては「これは本筋と関係あるのか?」と疑問を抱きながら読み進めることになり、中盤まで辛抱が必要でした。ただ、その一見冗長にも思える描写が終盤で大きな意味を持つことが分かったとき、個人的には「なるほど、これが必要な伏線だったのか!」と感心しました。ミステリーとしてフェアプレイであるために超能力の原理を作中で丁寧に説明する狙いも理解できます。とはいえ、「核心の事件が終盤近くまで顕在化しないのはいかがなものか」という声もあるように、序盤からミステリアスな事件が提示されない構成に物足りなさを感じる読者もいるでしょう

物語全体のトーンは終始真面目で論理的ですが、登場人物の心理描写や会話劇もしっかりしており、読みやすさは抜群です。文章は平易でテンポが良く、難解なテーマにも関わらずスイスイ読めました。また、手紙のやり取りや劇中劇(作中作)の挿入などメタ要素が盛り込まれており、本格ミステリーでありながらメフィスト賞らしい実験性も感じられます。香坂誠一というキャラクターの抱える宿命的な悲しみも印象的でした。彼は自ら考案したトリックの虜であり被害者でもあるのですが、最後まで自分の運命を受け入れて何とか生き延びようともがく姿には哀れさすら覚えます(この点は読み手によって解釈が分かれそうです)。トリック重視の作品ながら、実は人間ドラマとしても味わいがありました。

総じて、『最後のトリック』は「アイデア勝負」の作品でありながらプロットの整合性も高く、ミステリーとして十分以上に楽しめる良作だと感じました。斬新さゆえに好みは分かれるでしょうが、読み終えた後に本を抱えて考え込んでしまうような体験はなかなか得難いものです。ミステリー小説に新鮮な刺激を求める読者には、ぜひ一度チャレンジしてほしい一冊です。

考察・解説:究極のトリックが照らすもの

「犯人は読者である」——この大胆不敵な命題は、本格ミステリーの歴史における究極のテーマとも言われてきました。古今東西の推理作家たちは、読者を驚かせるために様々な意外な犯人像を生み出してきました。犯人が意外な人物であることはミステリーの華ですが、そのバリエーションは年代と共に拡張しています。古典では探偵役が犯人だったり、意外な例では動物や無生物がトリックに関与した作品も存在します(かつてオウムが犯行に絡むアイディアが成功すると、猿や犬、猫、さらには昆虫まで犯人に据えた「動物犯人もの」サブジャンルが生まれたほどです)。しかし、そうしたサプライズも出尽くしたミステリー界で最後に残された「誰も成しえなかった犯人」と言われてきたのが**「読者自身」**でした。

深水黎一郎さんは、この巨大なテーマに真っ向から挑んだ稀有な作家です。著者自身、「読者が犯人」という着想を小学生の頃に知り、それ以来長年にわたり実現方法を模索してきたとインタビューで語っています。30年以上考え抜いた末に辿り着いた解が、本作で提示されたトリックでした。その情熱と着想の源泉を考えると、作品内の隅々にまで施された論理的配慮や伏線の配置にも頷けます。例えば、物語中の超心理学実験パートは、一見すると本筋と無関係な寄り道に思えます。しかし深水氏は**「読者が犯人」という不可能を可能にするために、読者全員を物語世界に登場人物として組み込む必要があると考えました。その鍵となるギミックがテレパシー精神感応**といった超能力設定だったわけです。

本作では、香坂誠一という人物に**「他人に自分の文章を読まれると心臓発作を起こす」という特異体質**を持たせました。彼は離れた場所からでも自分に向けられた感情を感じ取ってしまう超能力者であり、そのせいで人に文章を読まれるだけで心拍が乱れ命の危険に晒されるのです。香坂はその苦悩ゆえに対人恐怖症となり、世間から隠れるように生きていました。ところが彼自身が書いたある「手紙」が不特定多数の目に触れてしまった瞬間、彼の心臓は限界を迎えてしまいます。そう、香坂誠一の死因は、多くの読者に自分の書いた文章を読まれたことによる心臓麻痺(ショック死)だったのです。言い換えれば、「読者が香坂誠一を殺した」という構図が成立します。

このロジックによって、深水氏は見事に「読者=犯人」という命題をクリアしました。本作そのものが主人公(=作中の小説家)の執筆した新聞連載小説というメタ構造になっているため、現実の読者はそのまま物語世界の読者役として登場することになります。そうすることで、性別や年齢にかかわらずすべての読者が作中人物と化し、香坂誠一の死に加担した共犯だと思わせる「環境」を作り上げたのです。この大胆すぎる語り口に最初は面食らいますが、物語を読み終えたとき、多くの読者が「本当に自分が犯人になってしまった…」と驚愕したといいます。作者の狙い通り、現実とフィクションの壁を越えた前代未聞のトリックが成立していました。

もっとも、この仕掛けに対する評価は読み手によって様々です。ミステリーのフェア性の観点から見ると、「超能力の要素を入れるなんて反則では?」という意見もあるでしょう。実際、Yahoo知恵袋では「ミステリー小説はやはり現実的であるべきでは?このトリックは納得がいかない」という声もありました。超常現象が絡むことでリアリティに欠けるという批判は一理あります。しかし本作の場合、あくまで作中で科学的考察(超心理学の説明)を十分行った上で超能力を一種の“仮定”として導入しているため、物語のロジックとしては破綻していません。むしろ、本格ミステリーの文脈で長年“不可能”とされてきたテーマを実現するために、作者が苦心してひねり出した解答がこの形だったと言えます。読者を物語に巻き込むという発想自体がメタ的であり、その点で好みは分かれますが、一つの推理小説として前代未聞の到達点を示した功績は大きいでしょう。

さらに深読みするなら、本作は「読者=犯人」というメタトリックを通じて物語と読者の関係性を問いかけているようにも感じられます。香坂誠一は、自分の文章が読者に読まれることで命を削られるという極端なキャラクターでした。それは裏を返せば、「文章(物語)の力が人を殺し得る」というテーマにも通じます。現実では本を読む行為で誰かが死ぬことはありませんが、フィクションの世界ではそれが可能になる。本好きの我々にとっては少しゾッとする発想ですが、**「物語の持つ影響力」「作家と読者の共犯関係」**を暗示しているようにも思えます。読者は物語を消費するだけでなく、物語世界に影響を及ぼし得る存在なのだと。本作を読み終えた後にそうしたテーマに思い至ると、単なる一発ネタの小説ではなく、文学的な深みも帯びてくるから不思議です。

『最後のトリック』は、ミステリーというジャンルの可能性を押し広げた実験作であり、同時に作者から読者への挑戦状でもありました。ミステリー史に残る「最後のトリック」という看板に偽りはなく、その大胆さと論理性の両立には賛否こそあれど感服するほかありません。未読の方にはぜひネタバレ無しで味わっていただきたいですし、既読の方とは「あのトリック」について語り合いたい、そんな魅力と話題性を持った作品と言えるでしょう。

読者の反応

SNSや書評サイト上でも、『最後のトリック』は大きな話題を呼び、多種多様な感想が寄せられています。ここではポジティブな反応とネガティブな反応それぞれ5件ずつを紹介し、その傾向をまとめてみます。

ポジティブな反応(称賛) 🟢

  • よく考えつき、うまく構成したなあと感嘆しました。最後まで『犯人は読者』というワードだけで読ませ切ったのはさすがです。」――トリックの着想と構成力を絶賛する声。練り込まれたプロットに驚嘆した読者は多いようです。
  • まれに見る野心作であり傑作」――ミステリー界の大御所・島田荘司氏による評価。プロの作家から見ても本作の挑戦性と完成度は高く評価されており、刊行当初から話題になりました。
  • 「読み終えたとき**本当に自分が犯人になってしまった…**と鳥肌が立ちました!」――「読者=犯人」という仕掛けに見事にはまってしまい、驚きを隠せない読者の声。ラストのインパクトに触れた感想です。
  • 今までにない新鮮な感覚を味わえる小説。読書好きにこそ読んでほしい」――他のミステリーでは得られない独特の読後感を評価する意見。ミステリーファンへの新鮮な刺激として本作を薦める声も多数。
  • 『読者が犯人』の設定のロジックは成功していると思います。文章も巧みで読みやすかった。」――一般読者のブログより。奇抜な設定を論理的に成立させた点や、文章の読みやすさ・伏線の巧妙さを称賛する感想です。

(※ポジティブな反応のまとめ)
好意的な意見として目立つのは、「こんなトリックは見たことがない!」というアイデアの斬新さに対する驚きと称賛です。加えて「論理が破綻しておらず巧みに構成されている」「伏線の張り方が上手い」といったプロット面の完成度を評価する声も多く見られました。ラストのインパクトについて「読後、本当に自分が犯人になった気がした」という感想を述べる読者もおり、その驚愕体験自体が一つのエンターテインメントになっている様子です。また、文章の読みやすさやテンポの良さから「読書慣れしていない人でも楽しめた」「若い世代にも薦めたい」といった意見もあり、実際に高校生がこの本をプレゼンしてビブリオバトル全国大会で優勝するといったエピソードも話題になりました。総じて、「大胆な仕掛けを楽しめた」「ミステリーの新境地だ」と好評を博しているようです。

ネガティブな反応(批評) 🔴

  • 特に前半の超心理学パートが退屈でした。面白くないうえに全体との関わりも見えてこず、読み進めるのが辛かったです。」――超能力実験の描写が長く感じ、序盤で挫折しそうになったという声。前半のテンポの遅さを指摘する意見です。
  • トリックが納得できない。やはりこれをすっきり成立させるのは無理があるのでは」――「読者が犯人」というコンセプト自体に無理があると感じた読者の意見。前例の辻真先『仮題・中学殺人事件』などにも触れつつ、本作のトリックにも疑問を呈しています。
  • 核心となる事件が終わり間際まで顕在化しないのはいかがなものか」――物語の中心である事件や謎が明確になるのが遅すぎるという指摘。ミステリーとしての盛り上がりに欠けると感じた読者もいました。
  • 人物の描写がもうちょっと欲しかった」――トリックに比重を置くあまり、キャラクターの掘り下げが足りず感情移入しにくいという批判。物語としての厚みに欠けるという意見です。
  • 「**超能力に頼ったオチはアンフェアでは?**現実的に考えるとおかしい」――本格ミステリーを期待すると、超常現象による解決は反則だと感じるという声。物語の前提自体が現実離れしており、リアリティの欠如を指摘する読者もいました。

(※ネガティブな反応のまとめ)
否定的な意見で多かったのは、前半部分の冗長さや退屈さに関する指摘です。超心理学の説明が長く物語の本筋と乖離しているように見えるため、「テンポが悪い」「読むのが辛かった」という声が聞かれました。また、肝心のトリックについても「読者が犯人というアイデアに無理がある」「説得力に欠ける」という批判が一定数あります。特に従来の本格ミステリーの文脈から見ると、超能力要素の導入に賛否が分かれ、「ご都合主義ではないか」「リアリティがない」と感じた読者もいました。さらに「事件の盛り上がりが終盤まで無いので物足りない」「人物描写が薄く感じた」といった物語面での不満も散見されます。まとめると、斬新なトリックゆえに読者を選ぶ部分があり、従来のミステリーの型を期待すると戸惑う人もいるようです。ただし、こうした批判的意見も含めて議論が活発になるのは、それだけ本作が挑戦的で話題性の高い作品だからこそとも言えるでしょう。

次回への期待:深水ワールドとミステリーの未来

『最後のトリック』自体は単巻完結の物語ですが、読後には深水黎一郎という作家の他の作品もぜひ読んでみたくなります。本作で大胆なデビューを果たした深水さんは、その後も独創的なミステリーを次々と発表しています。例えば2015年刊行の『ミステリー・アリーナ』は、密室殺人事件を題材に15通りの解決案が提示されるという前代未聞の「多重解決」ミステリーで、2016年の本格ミステリ・ベスト10で第1位に輝きました。こちらも読者参加型の推理ゲームのような趣向で、本格ミステリーの新境地を開いたと評判です。また、推理作家協会賞を受賞した『人間の尊厳と八〇〇メートル』では、陸上競技の世界を舞台に人間ドラマと謎解きを絡めた作品に挑戦しています(タイトルの通り800m走が題材で、社会派のテーマも含む意欲作です)。さらに、深水さんは音楽や美術に関する知識を活かした作品や、名探偵役が活躍するシリーズもの(「大癋見警部事件簿」など)も執筆しており、ジャンルやスタイルの幅を広げています。

本作で「究極のトリック」を成し遂げた深水氏が、今後どのような新たなチャレンジを見せてくれるのか、ミステリーファンとして大いに期待したいところです。読者を驚かせる仕掛け論理の整合性を両立できる作家は多くありませんが、深水さんはまさにその希少な一人です。次回作以降では、ぜひまた我々の度肝を抜くようなトリックや、心に残る巧緻な物語世界を提供してくれることでしょう。そして深水作品に刺激を受けて、他の作家たちも新しい発想の本格ミステリーに挑んでいけば、ジャンル全体がさらに盛り上がるに違いありません。『最後のトリック』という金字塔を経て、これからのミステリー小説がどんな進化を遂げていくのか――その未来に思いを馳せるだけでもワクワクしてきます。

関連グッズ紹介:作品世界を手元に

最後に、『最後のトリック』にまつわる関連アイテムをいくつかご紹介します。書籍はもちろん、電子版や他の深水作品も合わせてチェックしてみてください。

  • 『最後のトリック』河出文庫 – 本作の現行版単行本(文庫判)。2014年に河出書房新社より発売されました(元版は講談社ノベルス刊)。368ページに及ぶ長編ですが、文庫版には島田荘司氏による解説エッセイ「ミステリー史が最後のトリックにいたるまで」が特別収録されており、読み応え抜群です。価格は税込803円。カバー帯には大きく「読者全員が犯人」と書かれており、書店でも異彩を放っています。
  • 電子書籍版(Kindle他) – 『最後のトリック』は主要な電子書籍プラットフォームでも配信中です。Kindle、楽天Kobo、hontoなどで入手可能。紙の本では味わえない検索機能で伏線を振り返ったり、フォントサイズ変更で快適に読んだりできます。スマホやタブレットで気軽に“究極のトリック”を体験しましょう。
  • 深水黎一郎その他の作品 – 本作に興味を持った方には、深水さんの他の著作もおすすめです。中でも**『ミステリー・アリーナ』(原書房、2015年刊/講談社文庫、2018年刊)は、15通りの謎解きが競い合うという前代未聞の設定で本格ミステリファンを驚かせ、各種ランキングでも上位に輝いた話題作です。また、『人間の尊厳と八〇〇メートル』(創元推理文庫、2014年)も見逃せません。スポーツ×ミステリーの意外な組み合わせで、第64回日本推理作家協会賞に輝いた高評価の一冊です。その他、『大癋見(おおべしみ)警部事件簿』シリーズや、美術ミステリー要素を含む『花窗玻璃(ステンドグラス) 天使たちの殺意』**など、多彩な作品があります。いずれも深水さんならではの緻密なロジックと薀蓄が楽しめますので、ぜひ手に取ってみてください。
  • 関連グッズ・メディア展開 – 現時点で『最後のトリック』は映像化されていませんが、そのユニークさからファンの間では「映像化不可能な作品」として語られることも。グッズ展開は限定的ですが、深水黎一郎さんのサイン会やトークイベントが不定期に行われており、直筆サイン本はコレクターズアイテムになっています。オーディオブック化の要望も根強く、朗読でこのトリックをどう表現するか興味深いところです。今後のメディアミックス展開にも期待が寄せられています。

まとめ:総合評価 ★4/5 唯一無二の読書体験

『最後のトリック』は、ミステリー好きなら一度は体験してほしい意欲作中の意欲作です。総合評価を★で表すなら、満点に近い**★★★★☆(4.0)。斬新さと論理性の両立という難題をクリアした点を高く評価しつつ、若干説明調が長い部分や好みの分かれる要素があるため星4つとしました。しかし、この評価は読む人によって5にも3にも化け得るでしょう。それほどまでにチャレンジングで人を選ぶ作品であり、だからこそ一部では賛否が分かれても長年語り継がれる**価値があると感じます。

トリックの奇抜さばかりが注目されがちですが、読み終えてみればミステリー小説の持つ可能性を改めて感じさせてくれる、不思議と爽快な読後感が残る作品でした。私は本を閉じたあと、「自分も知らぬ間に物語の一部になっていたんだなあ」としみじみ思い返しました。皆さんはこの“究極のトリック”をどう受け止めるでしょうか? もし既に読了された方は、「読者犯人」トリックについての感想や考察をぜひ教えてください!未読の方もネタバレ厳禁でぜひチャレンジしてみて、一緒に語り合えれば嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございます。この記事が少しでも次に読む一冊選びの参考になれば幸いです。驚きを求める読書家のあなた、さあ今度はあなた自身がこの論理の罠に挑んでみませんか? きっと忘れられない読書体験になるはずですよ! ✨📚🔍 感想や意見はお気軽にコメント欄でお寄せください。それでは、ぜひこの記事をSNSでシェアしてお友達にもこの驚きを広めてくださいね!一緒にミステリーの世界を盛り上げましょう🎩🕵️‍♀️🔎

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morishy

職業:外資系ITサービス企業での技術職 趣味:読書、アニメ/ドラマ/映画鑑賞、スポーツ観戦、ゲーム、プラモなど 自己紹介: IT企業で技術職で働いており、新しいものについて比較的興味を持ちやすい体質です。最近は読書やアニメ、ドラマを中心とした動画鑑賞にどっぷりはまっており、作品の良いところを中心に紹介したいと考えて立ち上げました。 好き嫌いがない性格なので、結構幅広く作品を鑑賞しているので、皆さんの今後の読書や動画鑑賞に活かしてもらえるような情報提供ができれば幸いです。

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