ジャンルと設定: 『アンデッドガール・マーダーファルス』は、明治末〜19世紀末頃の歴史的舞台に怪奇ファンタジー要素を融合させた本格ミステリ小説です。人間と吸血鬼・人狼・人造人間(フランケンシュタイン)などの異形の存在が同じ世界に生きるという独特の設定が特徴で、その設定自体が物語のトリックや事件の成立に深く関わっています。著者の青崎有吾自身「本格」志向のミステリ作家であり、本作も正統派の謎解きの枠組みにファンタジーの装飾を施したような作品となっています。舞台となる世界では、吸血鬼や人狼などが実在し、人間社会から迫害を受けながらも共存を模索している状況です。例えば第1巻では、政府に協力して人間の血を飲まないと誓い「人権」を得た吸血鬼ゴダール卿の妻ハンナが殺される事件が発生します。彼女は銀の杭で胸を貫かれ聖水を浴びせられており、吸血鬼の弱点を突かれて死亡していました。しかも凶器の銀杭は鍵のかかった倉庫から持ち出されており、まさに密室状況での怪事件だったのです。
ストーリー展開(ネタバレ無し): 愛する妻を失ったゴダール卿は、犯人を突き止めるため怪物専門の探偵を雇うことにしました。それが本作の主人公コンビである、日本人探偵コンビ「鳥籠使い」こと真打津軽と輪堂鴉夜です。彼らは〈鳥籠〉に収めた生首の美少女探偵とその相棒という奇妙な姿で現れ、常識外れの推理ショーを繰り広げて事件を解決に導きます。物語は基本的に一巻で一つの事件解決まで描かれますが、同時に後述する“縦糸”の謎(主人公たち自身の目的)が物語全体を通して継続していく構成です。第1巻では吸血鬼殺害事件の真相解明を中心に進みますが、この事件の背後で暗躍する謎の人物「M」の存在がほのめかされ、物語はさらなる展開へと続いていきます。なお、事件のトリック自体は古典的なものを下敷きにしていますが、異形の者たちが存在する世界だからこそ成立する巧妙なアレンジがなされており、読者に「まだこんな驚きを生むことができるのか!」と鮮烈な印象を残します。本格ミステリとしてのロジックの冴えと、怪奇ファンタジー世界のユニークさが融合した新鮮な読書体験が味わえるでしょう。
構成上の特色: 本作はミステリの王道である密室殺人や推理劇を軸にしながら、舞台設定とストーリー構成が綿密にリンクしている点が特筆されます。19世紀という時代設定は通信技術や捜査科学が未発達であり、結果的に警察の介入しにくいクローズドサークルの状況を自然に生み出しています。雪山や孤島といった舞台装置に頼らずとも、当時の社会状況と怪物迫害という設定によって「閉ざされた事件現場」を成立させているのです。このため物語展開に無理がなく、不自然さを感じさせません。さらに、物語世界に存在する異形の怪物たちの特性そのものがトリックの一部となっており、「怪物の世界だから起こりうる事件」「怪物がいるから成立するミステリ」として物語が組み立てられています。たとえば第1巻の吸血鬼殺害事件では、吸血鬼の再生能力や弱点といった設定がトリックの根幹に関わっており、単なる舞台の飾りではなく本格ミステリとして論理的に機能しています。こうした世界観・設定とミステリ要素の高い融合が、本作の最大の魅力と言えるでしょう。
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著者・青崎有吾の経歴と作風
略歴と代表作: 著者の青崎有吾(あおさき ゆうご)氏は1991年生まれ、神奈川県横浜市出身の小説家・推理作家です。大学在学中に執筆した『体育館の殺人』で2012年の第22回鮎川哲也賞を受賞しデビューしました。このデビューは同賞史上初の平成生まれ受賞者となり、「真正面から本格ミステリに取り組み、エラリー・クイーンばりのロジカルな推理に堂々と挑戦している」と高く評価されました。以降も本格推理を基調とした作品を次々発表し、『図書館の殺人』『水族館の殺人』など〈裏染天馬シリーズ〉や、短編集『早朝始発の殺風景』、連作短編集『ノッキンオン・ロックドドア』などで注目を集めます。近年では長編『地雷グリコ』が話題となり、2024年に本格ミステリ大賞・日本推理作家協会賞・山本周五郎賞の主要ミステリ文学賞三冠を同時受賞する快挙を成し遂げました。その緻密なトリック構成と論理的な推理描写から、「本格ミステリ界の若きエース」「平成のエラリー・クイーン」との異名も取っています。
作風の傾向: 青崎氏の作風は、一貫してロジック重視の本格推理です。派手なアクションや直感よりも、提示された手がかりをもとに論理を積み上げて事件を解決するスタイルを得意としています。作中ではトリックの奇抜さそのものより、「オーソドックスなトリックを如何に鮮やかに魅せるか」を重視する傾向があり、読者にフェアに手がかりを提示した上で意外な真相へ辿り着かせる手腕に定評があります。また、ユーモラスな会話劇やキャラクター造形にもセンスが光り、深刻な事件を扱いながらもクスリと笑える軽妙さを織り交ぜることもしばしばです。
本作への活かされ方: 『アンデッドガール・マーダーファルス』第1巻にも、青崎氏の作風が存分に活かされています。まず推理の進め方は極めて論理的で、探偵役の輪堂鴉夜は動機や感情といった不確かな要素には踏み込まず、あくまで現場の事実と論理的推論によって真相に迫ります。いわゆる心理トリックではなく、エラリー・クイーンの系譜を思わせる手がかり重視の推理であり、「登場人物の行動原理なんて考えるだけ無駄」と言い切る鴉夜の姿勢には青崎氏の持ち味が表れています。一方で、鴉夜の冷徹な推理に対して真打津軽が終始ふざけた調子で場を和ませるため、物語全体は硬質になりすぎず絶妙なバランスが保たれています。この論理とユーモアのバランス感覚は、デビュー作以来培われた青崎氏の魅力の一つであり、本作でも読者を飽きさせない原動力となっています。また青崎氏は多彩なキャラクター設定にも定評がありますが、本作では異形の存在であるキャラクターたちに現実的な理由付けを与えることに成功しています。例えば生きた生首という突飛なヒロイン・鴉夜も、この怪物が存在する世界だからこそ「論理的に存在しうる」と作中で説明されており、設定の奇抜さが単なる思いつきではない緻密さで支えられています。こうした点にも、世界設定とロジックを重んじる青崎氏の作家性が色濃く活かされていると言えるでしょう。
主要登場人物と第1巻での見どころ
- 輪堂 鴉夜(りんどう あや) – 本作の探偵役。「首から下のない不老不死の美少女探偵」です。彼女は平安時代生まれの妖怪で、不死(フシ)ゆえに不老不死ですが、とある半鬼の襲撃者によって首をはねられ、生首だけの姿で生きています。不死身とはいえ半鬼に斬られた傷は癒えず、奪われた自分の身体を取り戻すために探偵業を営みヨーロッパ各地を旅しています。頭脳明晰で冷静沈着、膨大な知識を有し、第1巻でも吸血鬼殺害事件で巧みな推理を披露します。事件現場では鳥籠に入った鴉夜の頭部が鋭い観察眼で証拠を見抜き、論理的な推論を積み重ねて謎を解き明かしていきます。その推理力の高さと沈着冷静さは周囲を驚嘆させ、たとえ自分の境遇が悲惨でも取り乱さずに理を追求する姿勢は読者にもクールな印象を与えます。一方で、生首という常軌を逸した姿でありながら彼女自身は常に上品かつ毅然としており、物語全体の知的な牽引役となっています。第1巻では自身の身体を奪った黒幕への手がかりを掴む場面もあり、彼女の個人的な復讐譚が物語に大きな縦糸として横たわります。
- 真打 津軽(しんうち つがる) – 本作のもう一人の主人公で、鴉夜の相棒を務める青年探偵。明治時代の元・鬼狩り部隊の一員で、謎の人物によって鬼の血を注入された半人半鬼です。そのため常人離れした怪力と肉体能力を持ち、「鬼殺し」の異名でサーカスの見世物格闘士として生計を立てていました。しかし鬼の血の副作用で寿命が限られていることを悟り、不老不死の鴉夜に協力して彼女の体探しを手伝う代わりに、自らの延命策を見出そうとしています。津軽は飄々として掴みどころのない性格で、第1巻でも事件現場で不謹慎な冗談を飛ばしたり、鴉夜を「師匠」と呼んでからかうなどマイペースに振る舞います。常に軽口を叩き、真面目な推理の最中でもお構いなしに茶々を入れる彼の姿は、一見すると探偵物の主人公らしからぬふざけた印象ですが、そのおしゃべりは相手を煙に巻く戦術でもあり、また読者に情報を提示する役割も果たしています。津軽自身は「鴉夜の一番弟子」を自称し推理役は師匠に譲っていますが、いざというときの戦闘力は抜群で、第1巻クライマックスでもその怪力で重要な役割を果たします。彼のウィットに富んだユーモアは物語に軽快さを与え、時に陳腐なジョークさえも観客を笑わせる愛嬌に昇華しており、「もしかしたら陳腐かもしれないが何度も笑わせてくれた」という評価もあるほどです。鴉夜の冷静な論理と津軽の陽気な奔放さ、この対照的なバディの掛け合いこそが本作第1巻の大きな見どころであり、「二人のダイナミックなコンビぶりが本作最大の魅力」という声もあります。
- 馳井 静句(はせい しずく) – 鴉夜に付き従うメイド。寡黙で忠実な従者であり、鴉夜の鳥籠を携えて行動します。身体を失った鴉夜にとって手足のような存在で、第1巻でも移動や戦闘時に鴉夜を背負ったり鳥籠を構えるなど献身的に仕えます。武器は銃剣付きライフルで、銀の銃弾を発射できる特殊な銃を扱う射撃の名手です。銀や聖水といった怪物の弱点を熟知し、いざという時は護衛として津軽に劣らぬ働きを見せます。感情を表に出さないクールな性格ですが、鴉夜への忠義は絶対であり、彼女の命令には命懸けで応えます。第1巻では静句自身があるミスリードの鍵を握っており、読者にサプライズを与える場面もあります(※詳細は伏せます)。控えめながら存在感のあるキャラクターで、物語全体の安定剤のような役割を果たしています。
- ジャン・ドゥーシュ・ゴダール卿 – 第1巻に登場するヨーロッパの吸血鬼貴族。人類と融和を図る「人類親和派」の吸血鬼の一人で、人間の生き血を吸わない誓約を政府に提出し史上6人目の人権を得た吸血鬼となった人物です。莫大な資産を活かして人間社会に貢献し、差別を乗り越えようと努める温厚な紳士でしたが、愛妻ハンナを何者かに惨殺され悲嘆に暮れます。彼が鳥籠使いを依頼してきた依頼人であり、第1巻事件の発端を担う人物です。冷静沈着な鴉夜に対し、ゴダール卿は妻を奪われた悲しみと怒りで取り乱す場面も見られ、人間ドラマとしての側面も感じさせます。被害者であり依頼人という立場上、物語後半では探偵たちの推理を見守る役割ですが、吸血鬼社会の事情や人間との軋轢といった背景説明を担い、世界観を読者に伝える役割も果たします。
- ハンナ・ゴダール – ゴダール卿の妻で元人間の女性吸血鬼。人間だった頃にゴダール卿と結婚し吸血鬼化、子供にも恵まれ幸せに暮らしていましたが、第1巻冒頭で何者かに殺害されてしまいます。彼女の死因と遺体の状況(杭打ち+聖水)の不自然さが事件の謎そのものです。作中では既に故人のため登場場面は限られますが、ゴダール卿や子供たちの証言から心優しい女性だったことが窺えます。彼女を殺した犯人を巡って推理が展開し、その真相は読者に大きな驚きを与えることでしょう。なお、第1巻のラストでは彼女の死に関わる真犯人とは別に、更なる黒幕の存在が示唆され、物語の緊張感が次巻へと持ち越されます。
この他にも、第1巻ではゴダール家の子供たちや使用人、周辺の村人、さらにはある有名な怪物の伝説に関わる人物などが登場し、物語を彩ります。しかしネタバレ防止のため詳細は伏せます。いずれのキャラクターも「怪物ミステリ」らしい個性を持ち、怪異と人間の関係性を体現する存在として巧みに配置されています。主要登場人物である鴉夜・津軽・静句のトリオは物語の中心であり、彼らの掛け合いや背景に秘められたドラマは、巻を追うごとに深みを増していきます。第1巻ではまだ彼らの過去の一端が明かされるに留まりますが、それぞれが探偵稼業をせざるを得ない切実な理由を抱えていることが示唆され、続巻への興味をかき立てます。読者はぜひ彼らの行く末と成長にも注目しながら読み進めてみてください。
アニメ・漫画などのメディア展開
テレビアニメ: 『アンデッドガール・マーダーファルス』はテレビアニメ化され、フジテレビの深夜アニメ枠「+Ultra」にて2023年7月5日から9月まで放送されました。全13話構成で、原作小説の第1巻から第3巻途中までのエピソードを映像化しています。アニメーション制作はLapin Track(ラパントラック)で、『昭和元禄落語心中』『かぐや様は告らせたい』シリーズなどで知られる畠山守氏が監督を務め、シリーズ構成は高木登氏が担当しました。主要キャストは、輪堂鴉夜役を黒沢ともよ、真打津軽役を八代拓、馳井静句役を小市眞琴が演じています。そのほかアニー・ケルベル役に鈴代紗弓、アルセーヌ・ルパン役に宮野真守、シャーロック・ホームズ役に三木眞一郎など、豪華声優陣が名を連ねました。アニメ版は原作のミステリ要素とアクション、会話劇のバランスを巧みに映像化しており、特に夜のシーンの演出美や緻密な背景描写が高評価を受けました。暗がりに浮かぶ洋館や怪物たちの不気味さをスタイリッシュに表現し、「細部に至るまで絶対的な注意と愛情が払われている」とも評されています。ストーリー面でも、1話〜4話で第1巻の吸血鬼編を描き、続く章では怪盗ルパン編、人狼編へと展開していく構成で、原作のエッセンスを忠実になぞりつつスピーディにまとめられています。総じてアニメ版は「隠れた名作」との声もあり、国内外のミステリ好きアニメファンから支持を得ました。
漫画: 原作小説を元にしたコミカライズ版『アンデッドガール・マーダーファルス』も連載中です。漫画は友山ハルカ氏の作画で、2016年より講談社の月刊少年シリウスにて連載開始、その後Nemesisを経て現在はコミックDAYSで継続しています。単行本は紙版3巻・電子版5巻(2023年時点)まで刊行されており、原作小説第1巻の内容から順にエピソードが描かれています。コミック版は少年漫画的なアレンジも加わっており、アクションシーンの迫力ある描写やキャラクターデザインの魅力で人気を博しました。小説版の会話劇が多い部分も、漫画ならではのビジュアル表現で読みやすく工夫されています。こちらもアニメと同じく物語序盤(吸血鬼事件編)から始まり、徐々に有名キャラクターたちが登場する展開を追っています。原作者の青崎有吾氏も漫画版のストーリー監修に関わっており、原作ファンにも納得のクオリティとなっています。
そのほかの展開: 小説第1巻発売当初からAudible(オーディオブック)版が制作されており、朗読劇のように楽しめると話題になりました。また、2023年のアニメ化に合わせて東京・池袋の書店でフェアが開催され、関連グッズの販売や特典ペーパー配布なども行われています。さらに、原作者自身が手掛けた別作品『ノッキンオン・ロックドドア』がテレビドラマ化されるなど、青崎有吾作品全体への注目度も上昇しました(※『アンデッドガール〜』自体のドラマ化はされていません)。アニメ版は海外でもCrunchyrollなどを通じて配信されており、ミステリ要素の強い日本アニメとして一定の評価を得ています。総じて、『アンデッドガール・マーダーファルス』は小説・漫画・アニメとマルチメディア展開されており、それぞれの媒体で異なる魅力を楽しむことができる作品となっています。
読者・視聴者の反応(SNS・レビューサイトより)
ポジティブな反応(称賛) 🟢
- 「とにかく凄い物語! メチャクチャ面白いし見事です。本格ミステリでまだこんなことがやれるんだ、と新鮮な驚きを与えてくれた作品です」 – 古典トリックを活かした斬新な仕掛けや、怪奇×推理の組み合わせに驚嘆する声。従来のミステリ読者からも高い評価を受けています。
- 「設定が見事に活きた本格ミステリ。 異形の者たちが実在する世界だからこそ起こりうる事件で、“ミステリ”として成立している。舞台設定とトリックがピタッとハマり、使い古されたトリックなのに一気に事件の根底がひっくり返されるカタルシスが凄い」 – 世界観と論理が噛み合った構成に対する称賛意見。ファンタジー設定を単なる飾りにせず、ミステリの核心に昇華させた点が評価されています。
- 「キャラ同士の掛け合いが秀逸! セリフの多い番組は退屈になりがちだが、このアニメは飽きさせず視聴者の注意を引きつけることに成功している。登場人物たちは各シーンをとてもうまく仕切っており、声優陣も賞賛に値する。津軽と鴉夜、2人の主人公の掛け合いが最高で、ウィットに富んだユーモアに何度も笑わされた」 – アニメ版視聴者からの感想。会話劇の面白さや声優の熱演により、テンポよく楽しめたとの声が多く見られます。
- 「ミステリー好きにはたまらない作品。 サスペンス、不思議さ、全体的な面白さ、そしてほのかな“クールさ”のミックスが素晴らしい。探偵小説やミステリー小説が好きな人ならおそらくこの番組を楽しめるだろう。僕はいつもミステリー番組が好きなので、仕事や授業の後に見るのにまたいい番組ができてうれしい」 – 海外視聴者の反応。ミステリ要素とエンタメ性のバランスが「完璧なミックス」で、期待を裏切らない出来と評されています。
- 「映像・演出のクオリティが高い。 絶対的な注意と愛情が払われているかのような細部まで凝った映像で、目にも楽しい素晴らしいスタイルだ。特に夜のシーンの洗練された演出はとにかく素晴らしい。音楽も緊張感を高めており、全体的に素晴らしい」 – アニメ版の映像美に関する感想。独特のゴシック調ビジュアルや雰囲気づくりが高評価で、「2023年夏アニメで最高の作品になる可能性がある」と絶賛する声もありました。
ネガティブな反応(批評) 🔴
- 「会話劇が多く冗長に感じる。 生首の推理パートがヤバいくらいつまらなくて眠たくなったよ」 – ミステリ特有の長い推理シーンや説明台詞に対し、退屈だと感じる視聴者もいました。アクションより会話中心の展開のため、人によってはテンポが遅く映るようです。
- 「思っていたのと違いすぎた。 1話観てバトルものかと思ったけど実際は全然違った…期待してた方向性と違ったので失望した」 – 宣伝などからバトルアクションやホラーを期待した層にとって、本格推理主体の展開はギャップがあった模様です。「思っていた内容と大きく異なり戸惑った」という声が散見されました。
- 「設定やコラボ要素に拒否反応。 冒頭、明治時代×鬼(怪異)というのを知って吐いた(切った)」「うわ、ホームズとかルパンとか出て来ちゃったよ…ほんと、うわ..って感じ」 – 明治妖怪ものという設定自体が肌に合わないという否定的意見や、有名キャラ総出演の“オールスター感”に冷めてしまうという声もありました。特に後半でシャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンまで登場する展開について、「さすがにやりすぎ」「何でもありで白ける」という指摘も一部で見られます。
- 「推理が冷徹すぎて感情移入できない」 – 具体的引用は避けますが、鴉夜たち探偵側が論理優先で人情を排した推理を展開するため、「人間ドラマが薄く感じる」との意見もありました。犯人の動機よりトリック解明に重きを置く作風ゆえの好みの分かれ方でしょう。ただしこの点は逆に「動機論より論理重視で爽快」と好む声もあります。
- 「物語が完結せずモヤモヤする。 第1巻(およびアニメ1期)では縦軸の謎が全く解消されず終わるため、消化不良だという指摘もあります。実際、鴉夜の体探しや津軽の宿命といった物語の縦糸は本作ではまるで解消されない」 – 続刊前提の構成ゆえに、結末が完全にスッキリしないことへの不満です。「続きが気になるが出ていない(アニメの場合は続編未定)」という声で、良くも悪くも続きを待たされるフラストレーションを感じた読者・視聴者もいるようです。
- 「国内人気はいまひとつ? 面白いと評価するのもアンチが文句を言うのも勝手だが…と前置きしつつ、ある投票では「つまらない」が80%近くを占めていたというデータも。1245票中、おもしろい19%:つまらない81%という極端な結果で、どうにも受け入れられない層が多かった模様。」 – ネット上の匿名投票ではありますが、このように好き嫌いが大きく分かれる作品でもあるようです。会話劇中心の渋い作風や、前述のようなオールスター設定が合わない人には徹底的に合わないということかもしれません。
以上のように、『アンデッドガール・マーダーファルス』第1巻(およびそのアニメ版)への反応は総じて好評ながら人を選ぶ面もあると言えます。ミステリや奇抜な設定が好きな層からは熱狂的に支持され、一方で期待と違った人からは手厳しい意見も出ています。とはいえ「隠れた名作」「続きをぜひ映像化してほしい」との声も多く、今後シリーズ全体が評価を高めていく可能性を秘めた作品と言えるでしょう。
第2巻以降への展開(伏線・次巻予告など)
第1巻のラストで明らかになるのは、鴉夜と津軽の不幸な運命に関与した謎の人物“M”の存在です。鴉夜の体を奪い津軽に鬼の血を注いだ黒幕であり、杖に「M」の刻印がある謎の紳士――その人物こそ、後に明かされるモリアーティ教授です。ホームズ譚で知られるあのモリアーティが本シリーズにおけるラスボス的存在であり、彼が率いる怪物混成の犯罪集団「バンケット(夜宴)」との対決が物語の縦軸となっていきます。第1巻時点では名前こそ伏せられているものの、杖の“M”や計画の緻密さからシャーロック・ホームズ的な世界の巨悪を匂わせており、読者は次巻以降での直接対決に期待を高めることになります。
第2巻の展開: 舞台は日本から欧州へと移り、鴉夜たち鳥籠使い一行はモリアーティを追ってパリへ向かいます。第2巻『アンデッドガール・マーダーファルス2』では、なんと怪盗アルセーヌ・ルパンやオペラ座の怪人ファントム、さらには名探偵シャーロック・ホームズとワトソンまで登場し、物語は華やかなダイヤ争奪戦編へと突入します。ルパン対ホームズという夢の対決を背景に、鴉夜たちはパリ社交界で起こる怪事件に挑むことになり、文字通り「オールスターすぎて心配になるほど」の有名キャラ大競演が展開されます。この巻では、ルパンの怪盗テクニックやファントムの怪奇能力など新たな敵味方が加わり、物語のスケールが一気に拡大します。また、津軽・鴉夜の過去にもさらに踏み込んだエピソードが明かされ、彼らが背負う因縁とモリアーティの目的が徐々に浮かび上がってきます。
第3巻の展開: 第3巻では舞台を英国に移し、ホームズの故郷ロンドンや辺境の地でのエピソードが描かれます。特に「人狼編」と呼ばれる物語では、ヨーロッパの田舎町を襲う連続殺人事件の陰に人狼(オオカミ人間)の存在が疑われ、鴉夜たちが捜査に乗り出します。ここでもホームズやスコットランドヤードの面々と共闘しつつ、怪物ハンター組織との駆け引きや、人狼一族の悲哀などが盛り込まれた濃厚なミステリとバトルが展開されます。シリーズが進むにつれ、モリアーティ率いる「夜宴」のメンバーも本格的に暗躍を始めます。吸血鬼の美女剣士カーミラ、巨大な人造人間ヴィクター(フランケンシュタインの怪物)、半鬼化した切り裂きジャックなど錚々たる怪人が敵側として登場し、鴉夜・津軽に襲いかかります。第1巻で伏線として提示された“フランケンシュタイン”や“切り裂き魔”といったワードが、この辺りで具体的な形を取って物語に絡んでくるため、読者は「あの伏線はこう回収されるのか!」と膝を打つことでしょう。
シリーズ全体の縦糸: 鴉夜の奪われた身体と、津軽の鬼化の秘密という2つの謎が物語を縦方向に貫いています。第1巻終了時点ではいずれも未解決ですが、巻を追うごとに少しずつ手がかりが積み重ねられていきます。例えば、第2巻では鴉夜の体に関する新情報が得られ、第3巻では津軽を鬼にした“偉人”の目的が一端垣間見えるといった具合です。シリーズが進むほどに二人が探偵にならざるを得なかった切実な理由が物語世界の構造と結びついて明らかになっていき、その流れは非常にスリリングかつ論理的に構築されています。著者は最初からシリーズ展開を見据えてアイデアを練っているようで、各巻ごとの事件(横糸)と、黒幕モリアーティとの対決に向かう長編ストーリー(縦糸)が二層構造で楽しめるのが本シリーズの醍醐味です。
今後の展開への期待: 2023年7月現在、小説は既刊4巻まで刊行されており、物語はまだ続いています。第4巻ではついに舞台が極東の日本に戻り、「知られぬ日本の面影」と題したエピソードが展開されるなど、新章突入となりました(詳細は省きます)。モリアーティとの決着や鴉夜の運命がどのように収束するのか、シリーズファンの期待は高まるばかりです。第1巻のラストで張られた伏線(Mの正体、鴉夜の体の行方、津軽の残り時間など)は、後の巻でしっかりと回収される布石となっていますので、ぜひ続きを手に取って確かめてみてください。次巻以降は怪物vs怪物、人間vs怪物のバトル要素も増え、探偵劇でありながらアクションやエモーショナルなドラマも加速していきます。鴉夜と津軽が自分たちの因縁にどう決着をつけるのか、彼らの旅路を最後まで見届けたくなることでしょう。
関連グッズ・続刊情報
小説続巻: 前述の通り、小説『アンデッドガール・マーダーファルス』シリーズは現在第4巻まで刊行中です(講談社タイガより刊行)。各巻の発売日は、第1巻:2015年12月、第2巻:2016年10月、第3巻:2021年4月、第4巻:2023年7月となっており、2025年以降も続巻の刊行が期待されています。講談社タイガ公式サイトなどでは「既刊4巻好評発売中」と案内されており、書店で平積みされていることも多いです。今から読み始める方は、ぜひ続巻まで揃えて一気読みすることをお勧めします。物語の縦糸が気になるところで終わるため、続巻を手元に用意しておくと安心でしょう。
漫画単行本: 漫画版『アンデッドガール・マーダーファルス』の単行本も第1〜3巻(紙版)が発売中です。電子版では第5巻相当まで配信されています。漫画版は講談社シリウスKCより刊行されており、表紙にはキャラクター原案・岩本ゼロゴ氏のイラストとは一味違う友山ハルカ先生のスタイリッシュな絵柄があしらわれています。原作小説を読んだ後に漫画版でビジュアルを楽しむのも良いでしょう。
テレビアニメ関連: アニメ版のBlu-ray & DVDボックスが2023年11月24日に発売されました。Blu-ray BOXには全13話が収録され、特典として新規描き下ろしイラストのスリーブケースやブックレット、先行上映会の舞台挨拶映像、キャストオーディオコメンタリー、ノンクレジットOP・EDなど豪華な内容となっています。価格はBlu-ray BOXが税込33,000円とやや高額ですが、映像特典や特製ケースなどコレクターズアイテムとしての価値も高いです。また、販売店別の購入特典も用意され、アニメイトではアクリルスタンド、セブンネットではB2布ポスター、TSUTAYAではブロマイド等が付属しました。ファンにとってはキャラクターグッズを入手できる貴重な機会となりました。
音楽関連: アニメのオリジナル・サウンドトラックは作中劇伴を手掛けたyuma yamaguchi氏によるもので、30曲・約91分に及ぶ大ボリュームです。こちらはまず2023年7月26日に先行配信が行われ、続いて8月23日にCDリリースされました。劇中で印象的だったヴァイオリンやピアノによるゴシック調の曲や、戦闘シーンを盛り上げるジャズ/クラシック融合の楽曲など、聴き応えのある内容です。Apple MusicやSpotifyなど主要音楽サービスでも配信されているので、視聴後に余韻を楽しみたい方はぜひチェックしてみてください。
主題歌: オープニングテーマはCLASS:yが歌う「Crack-Crack-Crackle」、エンディングテーマはAnnaによる「reversal」です。OPは軽快で中毒性のあるガールズポップチューン、EDはしっとりとしたバラードで物語の締めにふさわしい雰囲気を醸します。いずれも配信シングルとしてリリース済みで、MVも公式YouTubeチャンネルで公開されています。
その他グッズ: アニメ化に伴い、各種キャラクターグッズも展開されました。先述のBD店別特典の他、キャラクターアクリルスタンドやキーホルダー、クリアファイル、ポスター、さらには鳥籠モチーフのアクセサリーなどユニークなグッズも制作されています。イベントでは津軽の羽織や鴉夜の着物柄をあしらったグッズも登場し、作品の世界観を日常で楽しめるアイテムがファンの手に渡りました。また、小説最新刊発売時には書店フェアとして特典ペーパーやしおりが配布されたこともあります。今後も続刊や続編アニメが出れば、新たなグッズ展開が期待できるでしょう。
まとめ
最後に、小説第1巻を読んで興味を持った方は、ぜひアニメ版や漫画版との比較も楽しんでみてください。小説では味わえないビジュアル・音響の刺激、逆に小説ならではの叙述トリックや心理描写など、それぞれの媒体で異なる魅力があります。大学生以上の大人の読者であれば、ミステリとしての奥深さや明治・ベルエポック期の雰囲気も存分に堪能できるはずです。ネタバレを避けつつ本記事で紹介したポイントを踏まえ、『アンデッドガール・マーダーファルス』第1巻を手に取っていただければ幸いです。そして鴉夜と津軽が紡ぐ奇妙な「笑劇(ファルス)」の世界に、ぜひ足を踏み入れてみてください。