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(あらすじ・感想)エラリー・クイーンさんの悲劇シリーズ4部作『Xの悲劇』(1932年)をヨム!

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皆さんは名作推理小説と名高いエラリー・クイーンさんの作品を読んだことがあるでしょうか?

今回この記事では、本格推理作家のエラリー・クイーンさんの悲劇シリーズ4部作の1作目となる『Xの悲劇』について、感想・書評を中心に紹介します。

著者のエラリー・クイーンさんはこの作品ではバーナビー・ロスというペンネームで執筆されており、この作品の他にも国名シリーズなど多数の本格推理小説を執筆されています。

論理的推理、本格推理小説を楽しみたいという方には是非おすすめしたい作品です。

平成のエラリー・クイーンと呼ばれている青崎有吾さんの作品についても感想を記事にしていますので、併せてみてもらえればと思います。

【プロフィール】著者:エラリー・クイーン(Ellery Queen)さんについて

今回紹介するエラリー・クイーンさんは、アメリカの推理作家、編集者です。

『エラリー・クイーン』は、従兄弟同士のフレデリック・ダネイさん(本名:ダニエル・ネイサン)と、マンフレッド・ベニントン・リーさん(本名:マンフォード・エマニュエル・レポフスキー )が探偵小説を書くために用いた合同ペンネームの一つです。

二人ともニューヨークのブルックリン生まれで、幼少の頃から仲が良く、会社勤めをするようになってからもよく会い、そうしているうちに合作でミステリを書くことを思いついたそうです。

プロットとトリックをダネイさんが考案し、2人で議論を重ねたあとリーさんが執筆したそうです。2人がそれぞれ得意とする分野を担当し、お互いの弱点を補完する共作体制だったようです。

エラリー・クイーンさんは、1929年に出版社のコンテストに投じた『ローマ帽子の謎』でデビューし、たちまち大評判になりました。その後も論理的推理とダイイング・メッセージにこだわる質の高い本格ミステリーを続々と発表し、アメリカを代表する作家となりました。

ダネイさんとリーさんの同期には、本格ミステリ作家のアガサ・クリスティさんやジョン・ディクスン・カーさんがいらっしゃいます。

作家として以外にも、ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍され、編集者としても「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行して多数の作家を世に送り出しています。

ちなみに、もう一つのペンネームとしてバーナビー・ロス(Barnaby Ross)という著名で「ドルリー・レーンシリーズ(悲劇四部作)」を書いています。エラリー・クイーン名義では、「国名シリーズ」などを書いています。

かつて、記者会見で「クイーン」と「ロス」の2人がそれぞれ覆面をかぶって「二人二役」にて公開討論したこともあったため周囲の人も同じ作家だとは気づかなかったようです。同一人物であることが明かされたときは驚きと偉大さを周囲は痛感したとのことです。

アガサ・クリスティさんほど広く人気を得ているわけではないかもしれませんが、本格推理小説作家として一般からマニアまで広く支持を集めている作家です。数多くの名作を執筆されており、以下の作品などを執筆されています。

  • 悲劇シリーズ『Xの悲劇』、『Yの悲劇』、『Zの悲劇』、『レーン最後の事件』
  • 国名シリーズ『ローマ帽子の謎』、・・・
  • ライツヴェルシリーズ『厄災の町』、・・・
  • ハリウッドシリーズ『悪魔の報復』、・・・

本格推理小説を楽しみたい方にはぜひおすすめしたい作家さんの一人です。

【登場人物、あらすじ】『Xの悲劇』について

満員電車の中で、渡し舟の中で、汽車の中で、次々に起る殺人事件。いずれも群衆の中での事件でありながら目撃者はなかった。ニューヨーク400万市民の中へまぎれこんだ犯人ははたして何者か?かつてシェイクスピア劇の名優と謳われながら、今は聾(ろう)となって舞台を退いたドルリー・レーンがサム警部を助けて初の名探偵ぶりを発揮するー純粋な謎解きの論理的興味に息もつかせぬ傑作。

引用元:新潮文庫『Xの悲劇』裏表紙より

株式仲介業者のハーリー・ロングストリートは、婚約者の女優チェリー・ブラウンを紹介するために、ホテルグラントに知人を集めます。

ホテルには共同経営者のジョン・デウィットとその家族や隣人など大勢が集まりましたが、ロングストリートは自分の家で宴会の用意をしているからと、他のメンバーに移動を促します。

豪雨の中、ホテルから移動する際にとても混雑している市電に皆で飛び乗り、家に向かう途中に事件は起こります。

満員で混雑している市電の中という密室空間で、ニコチン液がついた針を使用した殺人が発生します。

被害者のハーリー・ロングストリートは多数の人間から恨まれており、いずれの容疑者についても逮捕の決め手に欠けていました。

お手上げとなったサム警視とブルーノ地方検事は、元俳優のドルリー・レーン氏にこの事件の相談をするためにハムレット荘を訪問します。

レーン氏は耳が聞こえませんが、読唇術を使い会話を成立させ、また、元俳優のため、持ち前の演技力と執事のメーキャップによる変装が得意技です。

事件の内容をブルーノ検事とサム警部が、レーンに説明しますが、レーンはその時点で、確証がないが犯人の目星がついたと言います。

犯人の目星については、誰が犯人なのか教えてもらえず、その発言を信用できなかったブルーノ検事とサム警部は独自の捜査で容疑者を絞り込みますが、レーンもまた独自に行動して自分の考えを論理的に検証していきます。

どのように誰を犯人として特定したか?動機は?

登場人物

ドルリー・レーン俳優、私立探偵
クェイシードルリー・レーンの助手
フォルスタッフレーン家の執事
ハーリー・ロングストリート証券業者
ジョン・デウィット証券業者
ファーン・デウィットジョン・デウィットの妻
ジーン・デウィットジョン・デウィットの娘
クリストファー・ロードジーンの婚約者
フランクリン・アハーンジョン・デウィットの隣人
チェリー・ブラウン女優
ポラックス 俳優
ルイ・アンペリアール外国人
マイクル・コリンズ公吏
ライオネル・ブルックス弁護士
フレデリック・ライマン弁護士
チャールズ・ウッド車掌
アンナ・プラット秘書
ホアン・アホス ウルグヮイ領事
ブルーノ地方検事
サム 警部
シリング医師、検屍官

【感想、書評】『Xの悲劇』を読んで感じたこと

先日、青崎有吾さんの『体育館の殺人』を読んだ際に、青崎有吾さんが「平成のエラリー・クイーン」と呼ばれていることから興味を持ち、今まで読もうかなと迷っていたこの作品を手に取って読んでみました。過去に綾辻行人さんの『十角館の殺人』を読んだ時から気になってた著者です。

時代設定が1930年代のアメリカ社会なので、日常の生活状況や市電の仕組みなど、現在とは違う箇所が多かったり、事件に関わる細かい描写について、少し理解に時間のかかる部分もありました。

また、シェイクスピアに関わる記述がそれなりの頻度で出てくるのですが、私はあまりシェイクスピア作品を読んだことがなかったので、そこについてはかなり想像して補うパワーを使ったかなと思います。

ただ、現代でも名作といわれ続けているだけあって、物語を楽しんで読む上ではそこまで支障にならず、読むにつれてグイグイ引き込まれたので、これから読む方でも誰でも楽しめる作品だと思います。

まず見どころの一つは、聴覚を失った元俳優である探偵役のドルリー・レーンです。サム警視やブルーノ地方検事から聞いたことから、二人が気づかないようなことにいち早く気づき事件を解決に導きます。状況証拠と物的証拠から論理的に犯人を絞り込むところがすごいです。

ただし、レーンは推理の途中では確証を得るまで詳細を話してくれず、思わせぶりな態度をとるので、読んでいる方からすると若干フラストレーションが溜まります笑

そしてもう一つの見どころは、何層にも重なった事件と推理の過程、伏線のはりかたなど、これぞ本格ミステリと思わせる展開です。

最後に犯人や動機をはっきりと指摘する展開は非常に爽快で、名作といわれている次作の『Yの悲劇』も早く読んでみたいと思いました。きちんとタイトルにもなっている『X』についても最後に言及されているので非常にすっきりしました。

すこし読みづらいと感じるかもしれませんが、謎を解明しながら作品を楽しみたい方には是非おすすめしたい作品です。

レビューサイトでの評価をまとめてみました。本格ミステリとして推理を十分楽しめる反面、古い作品のため読みづらかったり、登場人物に感情移入しにくいかもしれません。トリックについては賛否両論で、文章や時代背景がスッと入ってくるようになれば、推理小説として非常に楽しめる作品です。

良い評価(他レビューなどから抜粋)

  • 本格ミステリとして心地よい緊張感があり、緻密に計算された作品で、爽快感と読み応えがある。
  • 終始一貫して派手な展開がないが、それがリアリティを生み出している。
  • 読みながら推測できることに対しても証拠が示されていてスッキリする。
  • 謎解きのページが少ないが不安だったが、非常に論理的でスマートな推理のお披露目だった。
  • トリックに驚いた。

悪い評価(他レビューなどから抜粋)

  • 登場人物が多いが探偵との感情の交流も少なく、魅力的なキャラクターがいない。ドルリー・レーンも好きになれなかった。
  • シェイクスピアの引用がくどくわかりづらい。文章も読みづらく世界観に馴染みにくかった。
  • 出てくる情報を精査して自分で推理を組み立てられないと楽しめない。
  • 推理小説の古典であるがゆえに、面白さ、感動といった点では、やはり古びてしまっている。
  • トリックが弱い。

【発行、カバーなど】『Xの悲劇』の関係者の方の紹介

私が読んだ新潮文庫の著者以外の情報は以下の通りです。

訳者:大久保 康雄

発行者:佐藤 亮一

発行所:株式会社新潮社

印刷所:錦明印刷株式会社

製本所:錦明印刷株式会社

カバー:増田 幸右

カバー印刷:錦明印刷株式会社

まとめ

今回は、本格推理作家のエラリー・クイーンさんの悲劇シリーズ4部作の1作目となる『Xの悲劇』の感想・書評を中心に紹介しました。

論理的推理、本格推理小説はやはり面白いなと痛感した作品でしたので、この次の作品『Yの悲劇』も早々に読んで記事にしたいと思います。

皆さんも是非読んで、楽しみながら自分の推理力を試してみてください!!

【おすすめ】エラリー・クイーンさんの他の作品を読む観る

今回紹介した『Xの悲劇』の著者であるエラリー・クイーンさんは、他にも多数の名作を執筆されています。全てを今回紹介するのは非常にヘビーとなりますので、今回の『Xの悲劇』以外の悲劇シリーズと国名シリーズを以下に載せておきます。

今回『Xの悲劇』を読んで、他の作品についても一度は読んでみたいなと感じましたので、本格推理小説にどっぷりはまれる時間を作って、今後記事にしていきたいと思います。

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morishy

職業:外資系ITサービス企業での技術職 趣味:読書、アニメ/ドラマ/映画鑑賞、スポーツ観戦、ゲーム、プラモなど 自己紹介: IT企業で技術職で働いており、新しいものについて比較的興味を持ちやすい体質です。最近は読書やアニメ、ドラマを中心とした動画鑑賞にどっぷりはまっており、作品の良いところを中心に紹介したいと考えて立ち上げました。 好き嫌いがない性格なので、結構幅広く作品を鑑賞しているので、皆さんの今後の読書や動画鑑賞に活かしてもらえるような情報提供ができれば幸いです。

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